著者
長澤 勲 手越 義昭 牧野 稔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.1058-1067, 1989-08-15
被引用文献数
14

近年建築設計の分野では パーソナルコンピュータ上に実現されたCADシステムが普及し 設計作業の合理化に貢献している.しかし これらのCADシステムは 建築設計の幾っかの側面である設計図書の編集 構造計算 積算等の作業を個別的に支援しているのが現状であり 次のような問題点がある建築設計では 設計が完了した後で発注者の要求や施工上の問題点を解決するために頻繁に再設計が行われる.設計条件が変化した場合の再設計は 従来から行われている手作業と 個別作業の支援のシステムを併用する方法では 図面の変更や構造計算の基礎データを設計者自身が修正しなければならず十分な効果を上げることが因難である.本研究では 設計の個別的な支援による問題点を解決するため 次の特徴をもつCADシステムを開発した.(1)建築物の設計情報を一元的に表現した建築物モデルを中心として 意匠設計 構造設計 積算などの設計作業を支援するモジュールを醒置した・このことによって設計者は 設計データの変換にわずらわされることなく一貫して設計作業を進めることができる.(2)建築物モデルの一貫性を管理する建築物モデル管理機構を設け システムの保守を容易にした.(3)段計者が行う標準的な設計作業の流れを想定し これを一貫して支援できるように配慮した.実際の設計例に適用した結果 従来の方法に比べて設計期間を約1/20に短縮できた.