著者
手越 達也
出版者
京都府立医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

接着分子の発現(1)カドヘリン骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)、腹腔マスト細胞(PMC)、メチルセルロースコロニー培養小腸上皮(M-IE)、腸管膜リンパ節細胞由来(M-MLN)マスト細胞をRT-PCR、FACS、免疫染色、ウエスタンブロット法で解析した結果すべてのマスト細胞においてE-カドヘリンの発現を確認した。しかしながらN-カドヘリンの発現は腹腔マスト細胞には認められなかった。また、P-カドヘリンの発現はすべてのマスト細胞において認められなかった。(2)CD103(αIEL)/β7インテグリンE-カドヘリンのリガンドの一つであるCD103(αIEL)/β7インテグリンのβ7発現はBMMC,PMC,M-IE,M-MLN由来マスト細胞すべてにおいて発現を確認した。CD103は通常のBMMCにおいて発現が認められないが、TGF-β1,PMA刺激により発現する。我々はこれらの刺激の他にIgE刺激によっても発現することを見出した。E-カドヘリンの機能(3)分化・増殖マスト細胞前駆細胞からマスト細胞に分化・増殖する過程でE-カドヘリンの関与を明らかにするため、小腸上皮単核球をメチルセルロースコロニー培養法で、形成するマスト細胞コロニーの数を解析した。E-カドヘリン抗体・ペプチドを添加した群では形成するコロニー数がコントロール抗体・ペプチド群と比較し有意に減少した。マスト細胞に分化した後の増殖にE-カドヘリンが関与しているかBMMCを用い、抗体・ペプチドをメチルセルロース培養に添加し、形成するマスト細胞コロニー数を解析した。E-カドヘリン抗体・ペプチドを添加した群はコントロール抗体・ペプチド群と比較し有意にコロニー数が減少した。(4)細胞接着E-カドヘリンを発現する上皮細胞株F-9とBMMCの細胞間接着をbinding assayで調べた結果、E-カドヘリンを介した細胞間接着を確認した。TGF-β1刺激によりCD103を発現させたBMMCではインテグリンの活性化(マンガンの添加)によりF-9細胞とBMMCの接着割合が増加した。
著者
内川 隆一 手越 達也
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

これまでの研究からNippostrongylus barisiliensis成虫由来分泌排泄(Nb-ES)抗原中には多くの生理活性分子が存在することが示されている。我々の見出したNb-ES抗原中に存在するラットT細胞に対するIFN-γ産生抑制活性もそのひとつであり、本研究ではその活性機構を解析することを目的として実施された。本研究では、まずこのNb-ES抗原が他種動物のT細胞に対してもIFN-γ産生の抑制活性を持つかどうかを検討し、ES抗原およびその部分精製分画はマウスT細胞に対してもIFN-γ産生抑制活性を示すことが確認された。。次にブタ回虫(As)抗原を用いて他種線虫由来抗原中にも同様の抑制活性が認められるかどうかを検討した。その結果、As体腔液中には明らかなIFN-γ産生抑制活性は認められなかったが、As-ES抗原のNb-ES抗原と同じ精製分画にラットおよびマウスT細胞に対するIFN-γ産生抑制活性が認められた。これら結果は、宿主T細胞に対する線虫由来抗原によるIFN-γ産生抑制が幅広く線虫と宿主間に存在する現象である可能性を示している。そこで、ES抗原中に含まれる活性分子の特定を進め、段階的イオン強度勾配による陰イオン交換クロマトグラフィーおよび自作の抗ES抗原ポリクローナルウサギIgG抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの組み合わせにより、ES抗原に比してほぼ20倍の比活性を持つ分画の精製に至った。その結果、活性分子は推定分子量が50kD〜100kDであること、活性は56℃30分の熱処理に対して抵抗性であるが、95℃30分の熱処理により部分的に失活すること、過ヨウ素酸処理により完全に失活することを明らかとした。