著者
柏田 祥策 持田 和男 尾添 嘉久 中村 利家
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.503-512, 1995-11-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

汽水湖である宍道湖および中海から採集した優占動物プランクトン (それぞれ Sinocalanus tenellus およびOithona davisae) を含む5種の動物プランクトンの有機リン殺虫剤7種 (cyanophos, salithion, malathion, phenthoate, fenitrothion, diazinon および dichlofenthion) に対する耐性および分解能を評価するとともに, 春・秋期における両湖水のこれら殺虫剤の消失速度定数および両湖の動物プランクトン個体密度を用いて, 両湖水における殺虫剤消失に対する動物プランクトンの寄与率を算出した. S. tenellus および O. davisae の phenthoate および diazinon に対する耐性は, 試験したほかの農薬に対するそれらよりも低かった. 供試した5種の動物プランクトンによる農薬の分解は, 動物プランクトン種および農薬の種類によりそれぞれ異なるが, いずれの動物プランクトンでも malathion および dichlofenthion に対して高い分解能を示した. 両湖水中における殺虫剤消失に対する動物プランクトンの最大寄与率は, 春期の fenitrothion, malathion および salithion の消失に対して, 宍道湖でそれぞれ0.4, 8.1および3.4%, 中海でそれぞれ0.1, 0.1および1.9%, 秋期の fenitrothion, cyanophos および diazinon の消失に対して, 宍道湖でそれぞれ0.6, 4.6および0.8%, 中海で0.1, 2.7および1.2%であり, 有機リン殺虫剤消失に対する動物プランクトンの寄与は高くないことがわかった.