著者
米山 兼二郎 川村 軍蔵 掘切 圭美
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.543-549, 2008-12-20 (Released:2012-09-15)
参考文献数
39

釣り針を回避することを学習したニジマスの脳から抽出したtotal RNAを釣り針未経験のニジマスに注射し,total RNA注射によって学習行動が転写するか否かをみた。1個体からのtotal RNA量は脳組織1.0 g当たり0.06-0.33 mgであった。対照魚は生理食塩水を注射した個体とハンドリング以外の処理を行わない個体とした。total RNA注射魚と対照魚を識別するために鰭に標識し,実験池に混ぜて収容して釣り試行に供した。用いた6群のうち4群で,total RNA注射魚は対照魚より明瞭に釣られにくかった。この結果より,釣り針回避学習がtotal RNAを介して釣り針未経験の個体に転写したと解釈された。どの群でも対照魚が比較的釣られにくかったのは,total RNA注射魚の釣り針回避行動が群内の他個体に社会的影響を及ぼしたためと考えられた。