著者
沢本 圭悟 文屋 尚史 米田 斉史 武山 佳洋
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.221-225, 2009-04-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
9

症例は78歳の女性。岩盤浴入浴中に意識消失した状態で発見されて救命救急センターに搬入となった。来院時,意識レベルGCS(Grasgow coma scale)3,収縮期血圧77mmHg,直腸温41.1°Cであり,意識障害,ショック,高体温を呈していた。直ちに急速輸液と体表冷却を開始した。各種検査や既往からは意識障害を来すような異常を認めず,病歴と身体所見から 3 度熱中症の診断で入院となった。ショックに関しては輸液負荷と血管収縮薬を必要としたが徐々に改善した。また,経過中にDICと肝機能異常を呈したが経過観察により軽快した。第 7 病日に人工呼吸器から離脱した。第30病日にリハビリテーション継続を目的に転院となった。神経学的後遺症は認めなかった。岩盤浴とは,40°C程度の岩盤上に20-30分間の仰臥と10分程度の休憩を繰り返し,多量の発汗を得るサウナ形式の風呂の一種である。岩盤浴はサウナや一般入浴に比べ安全と宣伝されているが,高齢者の入浴の際には熱中症予防も含めて,十分な注意が必要である。
著者
和田 健志郎 岩元 悠輔 中山 龍一 柿崎 隆一郎 文屋 尚史 片山 洋一 岸本 万寿実 成松 英智
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.580-584, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)
参考文献数
10

症例は58歳,男性。新型コロナウイルス感染症とARDSに対して人工呼吸,veno venous extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)管理となった。酸素化の改善が得られたものの,低コンプライアンスが改善せず,カテーテル関連血流感染の治療に難渋したため,来院第98病日に通常のVV-ECMOから透析用カテーテルと遠心ポンプを用いたextracorporeal CO2 removal(ECCO2R)に移行した。分時換気量の低下,食道内圧の変動の低下から,ECCO2Rによる二酸化炭素除去は呼吸努力を軽減し,肺保護換気戦略を可能にしたと考えられた。ECCO2Rは二酸化炭素の除去のみを目的とした体外循環であるが,本邦には専用のデバイスが存在しない。本症例では透析用カテーテルと遠心ポンプを併用した方法で安全に施行できた。また,ECCO2Rの適応は定まっていないが,長期ECMO後の離脱困難症例に対して有効な可能性がある。