著者
田中 英彦 富田 眞治 斉藤 信男 雨宮 真人 村岡 洋一
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

重点領域研究・超並列は総括班と、4つの研究班、それぞれ(A)超並列アプリケーション班、(B)超並列プログラミング言語班、(C)超並列計算機用OS班、および、(D)超並列アーキテクチャ班で構成されている。本年度は成果とりまとめの年度として、各班がそれぞれの成果をリファインするとともに、最終のデモンストレーションに向けてそれぞれの成果や開発されたシステムの垂直的な統合化をを行った。総括班は研究全体の取りまとめを司り、約3か月ごとに会合を開き、各班の研究状況の確認や意見交換などを行った。本年度は、特に成果とりまとめ年度として、3月の第7回「超並列」シンポジウムの開催、その際のデモンストレーションの計画、成果をまとめた英文図書の出版、過去のシンポジウムの予稿集のCD-ROMの作成など、プロジェクトの成果を積極的に国内外にアピールしてゆく活動を幅広く敢行した。A班は、超並列計算における新たなアルゴリズムやアプリケーションの構築を目的とし、以下のような応用に対しB班が開発した超並列言語NCXなどへの移植を行い、各種の実験や性能評価、及び言語開発へのフィードバックを行った:・熱流体、渦発生のシミュレーション・弾性体の変形と応力の計算(境界要素法)・場の計算(境界要素法)とSORによるポアソン方程式求解 ・有限要素法における自動メッシュ分割・コンピュータグラフィックスにおける並列レンダリング・生態系(魚群)の自律型行動シミュレーション・並列遺伝的プログラミングによるニューラルネットの構造生成・実時間音楽情報処理システムB班では、超並列言語NCXの実装を改良すると共に、共有メモリ型計算機、分散メモリ型並列計算機、ワークステーションクラスタなど、種々なアーキテクチヤを持つ並列計算機への対応化を行った。また、幾つかの代表的なベンチマークプログラミングを移植し、それぞれの計算機上で性能評価を行った。更に、その他のMIMD型の超並列型プログラム言語V,ANET-LやABCL/fなどの並列計算機上での開発も行った。C班では、超並列計算機でのマルチユーザの保護と性能、複数のユーザのプログラミングモデルの提供、超並列用入出力機構のサポート、などの特徴を備えた超並列計算機用のOS・COSを設計・開発した。本年は、D班の作成する超並列計算機JUMPミ1へのCOSの実装に備え、並列ワークステーションをLANで接続した評価用の環境を用意し、その上にJUMP1ミ1のエミュレータとCOSマイクロカーネルをのプロトタイプを結合したCOSエミュレータを設計・実装した。また、D班の開発したプロトタイプボードJUMP-1/3(仮称)へのCOSエミュレータの移植を行った。D班では、様々な超並列計算のパラダイムに対応できる共有メモリ超並列計算機JUMPミ1の研究開発を遂行し、本年度は(1)主要コンポーネントであるメモリベースドプロセッサ(MBP)、キャッシュコントローラ、ネットワークル-タなどのを開発・デバッグを行い、(2)MBPをDSPでソフトウェアシミュレーションして他の部分はJUMP-1と同設計のシステムJUMP-1/2の設計・開発をし、(3)また、JUMP-1の特徴である高速プロセッサ間ネットワークRDTや高速シリアルI/OシステムStaff-Linkの開発・及びCOS開発のために、SUNワークステーションに接続して種々の実験が行える評価用ボードJUMP-1/3の設計・開発を行った。