著者
斉藤 洋三 笹月 健彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1984

我々はこれまでに、スギ花粉症に対する抵抗性、およびスギ花粉抗原(CPAg)に対するIgE低応答性はHLAと連鎖した遺伝子によりCPAg特異的サプレッサーT細胞を介して発現される単純優性遺伝形質であり、HLA-DRは免疫応答遺伝子産物として、またHLA-DQは免疫抑制遺伝子産物として機能していることを明らかにしてきた。今年度は、HLA-DQが関与する免疫抑制のメカニズムをより詳細に解析するために、第3回国際白血球分化抗原ワークショップで得られた約50種の活性化T細胞に関わる単クローン抗体が免疫抑制におよぼす影響について検討した。非応答者の末梢リンパ球をB+M0,【CD4^+】T細胞,【CD8^+】T細胞に分画し、その組みあわせをCPAg,PWMおよび各種単クローン抗体と共培養した。その結果、免疫応答を直接刺激することなく、免疫抑制を阻止することで、非応答者のIgE免疫応答を回復させる単クローン抗体4B4を見い出した。この4B4分子はヘルパーT細胞上に表現されているが、サプレッサーT細胞上には表現されていなかった。また、培養開始時に細胞を抗4B4で処理しても免疫抑制は阻止されないことから、培養期間中のある特定の時期にこの抗体が存在することが、免疫抑制の阻止に必須であるものと考えられた。さらに免疫化学的な解析から、この分子は、125Kdと145Kdのポリペプチドからなるヘテロダイマーであり、HLAやT細胞レセプターとは物理的近距離には存在しないことが明らかとなった。さらに、CPAg特異的ヘルパーT細胞株から免疫沈降してくる4B4分子は、静止期T細胞のそれに比べて、新たに3種のポリペプチドを有していた。これらの結果から、活性化T細胞上の4B4分子が、サプレッサーT細胞やサプレッサー因子の標的分子として機能していることが推測された。特異性を担うHLA分子のみならず4B4のような分子も非特異的に免疫抑制に関与していることが明らかとなった。