著者
斉藤 由香
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.541-566, 2001-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本研究では,買収によってスペインに進出した日産自動車の現地子会社・日産モトールイベリカ社(NMISA)を事例企業として,その物流システムの構築プロセスを明らかにした.さらに,サブ.ライヤーとの部品調達関係を詳細に分析することで,近年NMISAが現実的な諸条件の中で物流システムをどのように発展させているのかを考察した. NMISAでは,そのサプライヤーが広域的に分散立地しているため,ミルクラン方式や調節倉庫利用方式といったさまざまな部品調達方法を導入し,「修正ジャスト・イン・タイム」というかたちでJIT納入を実現している・スペイ.ンでこうした多様な調達方法が発展した背景には, NMISAがサプライヤーの地域的分布に対応した側面だけではなく,英国日産との部品の共同購入の進展や,サプライヤーとの取引量や力関係,部品の特性など,部品調達をめぐるさまざまな条件に適応している側面も認められた.こうした現地における物流システムの構築プロセスには,既存企業の買収という進出形態や生産の小規模性が大きな影響を与えていた.