著者
中澤 宏 岸保 鉄也 佐藤 むつみ 小路 剛 斉藤 美和子 山縣 然太朗
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.228-233, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

西東京市医師会は公益事業として,「認知症予防のための聴覚検診」を立ち上げ,同意の得られた65歳以上の高齢者1156名(男性:435名,女性:721名)を対象として,市民の健康診査に合わせて認知症スクリーニング検査であるMMSEと純音気導聴力検査を行なった.また,片耳でも40 dB以上の難聴があり,同意が得られれば語音聴力検査も併せて施行した.その結果,平均年齢:75.2 ± 6.0歳,平均聴力:29.8 ± 14.7 dB,MMSEの平均は28 ± 2.6点,認知症疑いの23点以下は6.2%であった.加齢と伴に純音聴力は有意に低下し,純音及び語音聴力検査に関して,認知症群と認知機能正常群及び認知症群とMCI群の2群間に統計学的有意差を認めた.一方,MCI群と認知機能正常群の2群間には有意差は認められなかった.この研究結果は,認知症の発症リスクのある日本人の高齢者に対する聴覚の検討であるため,日本における認知症とその予防を考えるうえで極めて重要である.