著者
斉藤 雅人
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:18847110)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.637-644, 1991

第1報で膀胱壁のシミュレーションモデルとして, 2個のバネと1個のダッシュポットで構成される Glantz の粘弾性模型 (メカニカルモデル) が優れていることを明らかにし, そのメカニカルモデルの応力―歪み曲線を導く構成方程式を求めた. 第2報ではその構成方程式から, 物理学的計算式により膀胱内圧曲線を求める構成方程式を導き出した.<br>実際にイヌの実験によって得られた, 正常膀胱, 摘出膀胱, 骨盤神経切断膀胱の内圧曲線に, この構成方程式より得られる内圧曲線を fitting させて物性を検討したところ, 第1報で応力―歪み曲線より求めたそれによく一致していた. したがって, 膀胱内圧曲線から膀胱壁の材料強度学的性質を正しく求められることがわかった.<br>つぎに, 新たに開発した経尿管的膀胱内圧測定により得られたヒトの排尿時膀胱内圧曲線に, 構成方程式より得られる内圧曲線の除荷曲線を fitting させて, 排尿時膀胱の物性を求めた. すると蓄尿時に比べて粘弾性のうちの弾性が数値にして10倍ほど強くなっていた.<br>このようにして膀胱の蓄尿と排尿のメカニズムを膀胱壁のメカニカルモデルから説明できた.
著者
松田 忠久 斉藤 雅人 阿部 昌弘 橋本 哲也 小林 裕之 渡辺 泱
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1417-1422, 1987-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

1982年6月から1985年10月までに, 京都府立医科大学泌尿器科学教室を受診した腎腫瘤症例で, 腹部CT, 腎超音波検査, 腎血管造影などにて診断が確定し得なかった10例に対して, 選択的腎生検を施行した.選択的腎生検にて得られた組織診断は, 腎細胞癌6例, 乳頭状腎細胞癌1例, 移行上皮癌1例, 血管筋脂肪腫1例, 膜性増殖性糸球体腎炎1例で, それにより各々の症例の治療のために極めて重要な情報が得られた. また生検を契機とした腫瘍細胞の播種をはじめとした合併症は, 認められなかった.よって腎腫瘍に対する選択的腎生検は, 従来の諸検査では診断できなかった腎腫瘍の診断に非常に有用であると思われた.