著者
久島 繁 渡辺 恒夫 新井 勇治 THORPE Trevor A.
出版者
日本植物細胞分子生物学会
雑誌
植物組織培養 (ISSN:02895773)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.52-58, 1985

ラクトース適応のメカニズムを検討するため, アサガオの非耐性および耐性培養株を用いて, いくつかの検討を行った. 両接細胞にラクターゼ, UDP-ガラクトースピロフォスフォリラーゼ, UDP-グルコースピロフォスフォリラーゼおよびUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性は存在した. それゆえ, 非適応細胞も潜在的にはラクトース代謝能を持つものと思われた. しかし, この細胞ではUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性は極めて弱く, 細胞壁結合型ラクターゼ活性は適応細胞のそれの約30%であった. ラクトース適応細胞をラクトース培地で培養した場合, 培養期間を通じて細胞内グルコース含量は低く, ガラクトース含量は高かった. それゆえ, これらの細胞はガラクトースよりグルコースをプレファレンシャルに利用するものと思われる. ガラクトースに培養した非適応細胞のG-6-P, G-1-PおよびGal-1-Pの含量はショ糖で培養したそれの約3倍であった. また, UDPGおよびUDP galの含量はショ糖で培養した場合のそれぞれ約1.5倍, 僅増であった. それに比して, ガラクトース培養非適応細胞のG-6-P, G-1-P, Gal-1-Pの含量はショ糖培養のそれの約2倍となっており, ガラクトース培養適応細胞のそれより約20%低かった. この事は適応細胞が非適応細胞に比して大きなガラクトースおよびラクトース代謝能を持っている事を示唆している. これらの結果に基づきラクトースおよびガラクトースの阻害とそれに対する適応について論議した.