著者
瀧本 真也 羽生 道弥 新井 善雄 長澤 淳 御厨 彰義 中根 武一郎 寺西 宏王 渡邊 隼 辻 崇
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.466-470, 2013-11-15 (Released:2013-12-04)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

症例は58歳,男性.大動脈弁閉鎖不全症に対し手術適応と判断されたが,既往のなかで歯科治療のさいの補綴物が原因の金属アレルギーの既往が判明した.当時の記録では金,鉄,白金,コバルト,クロム,銅,亜鉛に対しパッチテストで陽性を示していた.胸骨正中切開で行う開心術において通常使用される金属製の手術材料のうち,長期間体内に留置される可能性のある,胸骨サージカルワイヤーや一時的ペーシングワイヤー,血管結紮クリップと金属一般においてパッチテストを施行した.胸骨ワイヤーとペーシングワイヤーにアレルギー反応を認めた.他金属ではアルミニウム,錫,パラジウム,インジウム,イリジウムに陽性反応が出た.機械弁含有金属データより,CarboMedics社製機械弁とOn-X機械弁は使用可能と判断した.手術は本人希望にて胸骨正中切開アプローチとし,上行大動脈送血・右房脱血にて体外循環を確立後,CarboMedics社製機械弁(27 mm)で大動脈弁置換術を施行した.一時的ペーシングワイヤーは離脱のさいに必要であったため留置としたが術翌日に抜去した.胸骨は5号Ethibond糸を用いて閉鎖した.術後急性期および術後1年経過時点でアレルギー反応なく,経過良好である.