著者
新妻 絢
出版者
一般社団法人 日本メディア英語学会
雑誌
時事英語学研究 (ISSN:21861420)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.45, pp.29-42, 2006-09-01 (Released:2012-11-13)
参考文献数
23

本稿では、サイードの二項対立的言説に対する批判を分析することにより、ヒューマニズムにもとづく批評の重要性について論じた。二項対立的な言説は (1) 歪んだ理解を促す、 (2) 「他者」の排除につながる、 (3) 無意味な対立関係を作り出すという点で問題がある。二項対立的言説にとらわれない思考を人びとに促すためには、二項対立的思考に代わる理解の枠組みが必要である。ヒューマニズムにもとづく批評は、権力の側の排他的で好戦的な集団的アイデンティティの強化を目指す二項対立的な思考から、あらゆるものとのつながりを強調する新たな理解の枠組みへと転換を図るための一つの効果的な批評モデルである。