著者
乾 つぶら 島田 三恵子 早瀬 麻子 緒方 敏子 時本 秋江 保条 麻紀 新川 治子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.189-197, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

目 的 妊娠末期から産後4ヶ月の母親の睡眠覚醒リズムの特徴と変化を明らかにする。対象と方法 同意を得た妊娠末期の妊婦57名を対象とし,このうち追跡調査できた産後1ヶ月47名,産後4ヶ月34名に縦断調査を行った。睡眠表に一日の睡眠と覚醒を30分毎に連続1週間の記録を依頼し,郵送法で回収した。夜間・昼間・総睡眠時間,最長睡眠時間とその開始時刻及び終了時刻,昼睡眠・総睡眠回数,中途覚醒時間とその回数,及び睡眠覚醒のリズム周期を検討した。結 果 総睡眠時間は妊娠末期7.79時間,産後1ヶ月6.73時間,産後4ヶ月6.91時間であり,夜睡眠時間は各々6.75時間,5.85時間,6.36時間であり,最長睡眠時間は6.39時間,3.46時間,4.13時間であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,これらの睡眠時間は妊娠末期よりも短縮した(p<0.01~0.001)。夜間の中途覚醒時間は妊娠末期0.42時間,産後1ヶ月1.70時間,産後4ヶ月1.14時間であり,中途覚醒回数は各々0.3回,1.7回,1.5回であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,中途覚醒は妊娠末期よりも増加した(p<0.001)。妊娠末期から産後4ヶ月は睡眠が分断されても,最長睡眠は0:22から6:50の時間帯にあり,睡眠覚醒のリズム周期は24.04~24.08時間であった。妊娠末期と産後4ヶ月では,最長睡眠時間とその入眠時刻との負の相関(p<0.001~0.05)がみられた。いずれの時期も入眠時刻と夜睡眠時間との負の相関があった(p<0.01~0.001)。結 論 妊娠末期から産後4ヶ月にかけて,総睡眠時間,夜間睡眠時間,および最長睡眠時間が減少し,夜間の中途覚醒が増加しても,最長睡眠時間は夜間にあり,睡眠覚醒のリズム周期は約24時間であることが明らかになった。また,妊娠末期と産後4ヶ月では最長睡眠の入眠時刻が早いほど最長睡眠時間は長いことが明らかにされた。
著者
新川 治子 島田 三恵子 早瀬 麻子 乾 つぶら
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.48-58, 2009 (Released:2009-08-26)
参考文献数
27
被引用文献数
8 13

目 的 本研究は最近の妊婦におけるマイナートラブル(以下MSとする)の種類,発症時期,発症率,及び発症頻度を明らかにすることを目的とした。対象と方法 全国から抽出した11医療機関に通院中の623名(初期56名,中期201名,末期366名,平均28.1±8.0週)の妊婦を対象に質問紙調査を行った。調査票は先行研究,MSに関連する症状,及び妊産褥婦から聞き取った症状から95の不快症状に関する質問項目で作成した。結 果 50%以上の妊婦に発症している症状が95の不快症状のうち45症状あった。発症率が高い(50%以上),または発症頻度の高い(「たびたびある」から「いつもある」)47症状をMSとして抽出した。易疲労感,頻尿,全身倦怠感は,妊娠全期間を通じて90%以上の妊婦に発症するMSであり,有症者における発症頻度も高かった。妊婦1人あたりのMS発症数は2から46症状で,平均27.0(±10.4)症状であった。初経産別での1人あたりのMS発症数に有意差はなかった。未就労妊婦の方が就労妊婦より1人あたりのMS発症数が有意に多く,特に未就労初産婦の発症数が多かった。妊娠時期により1人あたりのMS発症数に有意差はないが,発症率の高い症状は異なっていた。 因子分析により「胎児の発育に関連する筋関節症状群」,「上部消化器症状群」,「睡眠関連症状群」,「便秘関連症状群」,「ネガティブな精神症状群」の5症状群が抽出された。結 論 MSに関する実態調査を行った結果,妊婦の生活習慣や環境の変化,就業状況の変化に伴って,従前のMSに無い症状や発症率の異なる症状が明らかとなった。対象の属性や妊娠時期により好発症状にも違いがあることから,適切な時期に妊婦の状況にあった助言することが重要である。
著者
新川 治子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.36-47, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
44
被引用文献数
1

目 的妊娠による「マイナートラブル」の有症率と頻度の産後1年間の変化と,産後各期の有症数に関連する因子を明らかにすることである。対象と方法広島県内の4医療機関に妊婦健康診査又は出産準備教育に来院した妊婦を対象にした。調査は自記式質問紙を用い,妊娠期,退院時,産後1か月,4か月,1年の計5回縦断的に行った。内容は妊娠末期のマイナートラブル29症状の有無と頻度,分娩様式,栄養方法,育児負担感,母親の乳児への愛着尺度日本語版(以下,MAI-Jと略す)と日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価票(以下,EPDSと略す)である。一元配置分散分析で妊娠期からの有症数の変化,カイ二乗検定で各症状の有症割合,積率相関係数及び対応のないt検定で有症数と各因子との関連を検討した。結 果妊娠期は1566名に配布,回収数681名(回収率43.5%)中,妊娠末期の回答422名(有効回答率62.0%),退院時126名,産後1か月88名,産後4か月79名,産後1年70名を対象とした。マイナートラブル数の平均は分娩後に経過と共に減少していた(F=130.93, p<0.01)。症状別では22症状の有症率が有意に減少し,3症状が産後に増加,4症状が不変であった。退院時及び産後1か月時のマイナートラブル数は,産後1か月から1年までのEPDS得点(r=0.39~0.58, p<0.01),及び育児負担感得点(r=0.30~0.44, p<0.05)と有意に相関した。結 論本調査により妊娠期のマイナートラブル数は産後に影響すること,また産後のマイナートラブル数と産後うつや育児負担感との関連が確認できた。これは快適な育児は産後からではなく,妊娠期からのケアが重要であることを示すものである。妊婦が体験している不快症状を「マイナートラブル」と軽視せず,1つでも症状が改善するよう支援する必要がある。