著者
浦野 誠 吉岡 哲志 加藤 久幸 堀部 兼孝 日江井 裕介 油井 健宏 岡田 達佳 櫻井 一生
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.443-447, 2014-12-25 (Released:2015-01-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

症例は40代,女性。右耳内違和感を主訴に受診。術前約20ヶ月の間に,頻回に再発を繰り返す右外耳道腫瘤に対して計6回の生検が施行された。1~4回目では粘液を有する炎症性肉芽様組織と病理診断し,経過観察をされていた。経過中に耳下部腫脹は認めなかった。5回目の生検で悪性腫瘍の可能性を疑い,その後CTで右耳下腺に腫瘍が存在することが判明し,外耳道を含む拡大耳下腺全摘術が施行された。手術検体の病理組織像では,耳下腺上極に発生した低悪性粘表皮癌が上方に進展し,軟骨部外耳道の「サントリーニ裂溝」を穿通して外耳道へ進展していた。本例は,臨床的および病理学的に終始外耳道病変と認識されていたことで,生検組織を長期間にわたり奇異な粘液性上皮構造を含む炎症性肉芽と判断し,耳下腺腫瘍の存在を早期に認識することが困難であった。まれではあるが,本例の様な耳下腺腫瘍の非定型的な外耳道方向への進展形式について注意を払うことが必要と思われた。
著者
加藤 久幸 油井 健宏 日江井 裕介 桜井 一生
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-47, 2014-03-31 (Released:2014-08-20)
参考文献数
18

中咽頭癌の診断・治療には HPV との関連の解明や喫煙率の低下, IMRT や分子標的薬, ロボット手術などの新しいモダリティの出現によりパラダイムシフトが起こっている. HPV 関連癌は非関連癌と比べ有意に遺伝子変異が少なく, 非喫煙者に多く, 予後が良好で生物学的に異なる性格を持つ癌腫との認識が必要である. 現在, HPV 関連癌に対して治療成績を保持・向上しつつ, 治療強度を下げて患者の QOL を改善するかに主眼を置いた臨床試験が行われている. 本稿では発癌要因と発症率の動向, HPV 関連癌と非関連癌の分子生物学的相違, HPV の検出法, p16免疫染色の有用性, HPV 感染・喫煙と予後, 臨床試験について概説する.