著者
日野 泰道
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.137-142, 2010 (Released:2011-03-16)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

我が国では,台風や地震等の自然災害が毎年発生するため,それに伴う災害復旧工事も毎年行われる。災害復旧工事は,平時の工事と比較して,緊急性などの特別な工事条件が存在するため,十分な仮設設備を準備・設置することが困難となる場合がある。ゆえに安全な作業を行うためには,そのような工事環境を想定した安全対策を事前に準備しておく必要がある。ところが,災害復旧工事における労働災害の定量的な分析は,あまりなされていないため,その災害防止対策も,十分に整備されているとはいえないと考えられる。特に大規模災害の復旧工事の経験が乏しい地場中小建設業者では,そのような環境下での安全対策立案のための適切な情報・ノウハウが整っていない場合があり,安全対策の不備による労働災害の発生が懸念される。そこで本研究は,過去に発生した災害復旧工事における災害発生状況について定量的な検討を行い,安全対策の基礎資料を提供することを目的とした。検討の結果,災害復旧工事の災害種別には,建築工事と土木工事で大きな違いがあることがわかった。土木工事では,墜落災害に加えて建設機械に起因する災害や土砂崩壊災害など,典型的な災害は数種類あることが分かった。一方,建築工事では,典型的な災害としては墜落災害が挙げられ,特に死亡災害の約9割を占めている事が分かった。そこで本報では,建設工事において最も発生件数の多い墜落災害を取り上げ,土木工事と建築工事に分けて,その災害発生原因等の特徴について更に整理を行った。