著者
佐藤 しのぶ 原口 和也 早川 真奈 冨永 和宏 竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.437-443, 2017-06-05 (Released:2017-07-12)
参考文献数
26

テロメラーゼの触媒活性因子であるhuman telomerase reverse transcriptase(hTERT)遺伝子のプロモータ領域のメチル化パターンががんの進行と深くかかわっていることが報告されている.したがってこのプロモータ領域のメチル化パターンが検出できれば,がんの早期発見の手法として発展できると期待される.著者らは,hTERT遺伝子のプロモータ領域中の五つのCpGサイトを含む24塩基をターゲットとし,10種類のプローブDNAを有するマルチ電極チップを作製した.このチップを用いた電気化学的ハイブリダイゼーションアッセイ(Electrochemical hybridization assay, EHA)によってhTERT遺伝子のメチル化パターンによる口腔がん診断を試みた.ここでは,病院での簡易診断を目指して口腔がん,白板症,健常者から得られた口腔ぬぐい液を用いて,ゲノムを採取し,亜硫酸処理したのち,メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-specific polymerase chain reaction, MSP)を行った.得られたMSP産物をEHAにより評価したところ,サンプルのメチル化頻度とがんの進行度に相関が示された.白板症,健常者を含むすべてのサンプルからメチル化頻度の高いDNAプローブに対する電気シグナルのReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて口腔がんの正診断率を算出したところ,91% であった.