著者
竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.84-87, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
3

遺伝子の本質を司るデオキシリボ核酸(DNA)は,核酸塩基,デオキシリボース,リン酸エステルの繰り返しによって構成されている高分子である。DNAは,核酸塩基の並びによって書き込まれたタンパク質のアミノ酸配列をコードするだけでなく,塩基配列によって形成する独自の構造とそれに結合するタンパク質によって特定のタンパク質をいつどれぐらい作るかを制御している。生命の理解のためには,DNA分子構造の理解と物理化学的な定量的解析が必要である。
著者
佐藤 しのぶ 原口 和也 早川 真奈 冨永 和宏 竹中 繁織
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.437-443, 2017-06-05 (Released:2017-07-12)
参考文献数
26

テロメラーゼの触媒活性因子であるhuman telomerase reverse transcriptase(hTERT)遺伝子のプロモータ領域のメチル化パターンががんの進行と深くかかわっていることが報告されている.したがってこのプロモータ領域のメチル化パターンが検出できれば,がんの早期発見の手法として発展できると期待される.著者らは,hTERT遺伝子のプロモータ領域中の五つのCpGサイトを含む24塩基をターゲットとし,10種類のプローブDNAを有するマルチ電極チップを作製した.このチップを用いた電気化学的ハイブリダイゼーションアッセイ(Electrochemical hybridization assay, EHA)によってhTERT遺伝子のメチル化パターンによる口腔がん診断を試みた.ここでは,病院での簡易診断を目指して口腔がん,白板症,健常者から得られた口腔ぬぐい液を用いて,ゲノムを採取し,亜硫酸処理したのち,メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-specific polymerase chain reaction, MSP)を行った.得られたMSP産物をEHAにより評価したところ,サンプルのメチル化頻度とがんの進行度に相関が示された.白板症,健常者を含むすべてのサンプルからメチル化頻度の高いDNAプローブに対する電気シグナルのReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて口腔がんの正診断率を算出したところ,91% であった.
著者
竹中 繁織
出版者
九州工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

ヒトテロメアDNA配列を有するオリゴヌクレオチドの両置換基末端にピレンを導入したPSO4を用いて、K^+添加に伴うゲル電気泳動、吸収、円二色性、蛍光、蛍光偏光スペクトル変化等の解析によってヒトテロメアDNAの4本鎖構造(最近になってbasket、chahr、propeller、hybrid I、hybrid II型の五つ)のうちchair型の時だけ効果的なFRETが見られると予測された。そこで前年度はG-リッチオリゴヌクレオチドにトロンビン結合アプタマー(TBA)配列を導入することによってより高いFRET効率を示すPSO2の合成に成功した。しかし、細胞内へ導入すると導入された細胞の73%が細胞死を起こすことが明らかとなった。これは、TBA配列が核内に存在するヌクレオリンタンパクが結合したためと考えられた。そこで当該年度では二つのFRET色素に加えビオチンを導入したPSO5を合成した。これをストレプトアビジンと結合させ同様に細胞へ導入することによって細胞毒性を軽減することに成功した。PSO5をアビジンに結合させることによってヌクレオリンの相互作用が阻害されたものと考えられたが、このような条件によってもPSO5の核への移行が観察されたが、一部は細胞質に留まっていることがわかった。そこで細胞内のK^+濃度を減少させることが知られているAmphotericin Bの添加に伴う蛍光変化を調べた。その結果核内のK^+濃度の上昇がみちれた。これは、核内のK^+をモニターできた最初の例と見られる。しかしながら、PSO5の合成収率は低く、また、精製も困難であった。そこで、ペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを利用してPSO6の設計を行い、その合成に成功した。予備的検討では、PSO5よりも感度良くK^+濃度の蛍光イメージングが可能なことが明らかとなった。