著者
早瀬 真弓 今西 純一 中村 彰宏
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.812-816, 2010-03

名勝清風荘庭園は明治44年頃から数年かけて七代目小川治兵衛(植治)によって作られた庭園であり、昭和26年に文化財保護法の規定により名勝指定されている。本庭園は京都市左京区田中関田町に位置し、植治による庭園の特徴のひとつである京都東山の借景、すなわち五山の送り火で有名な大文字山やその周辺の山並みを庭園の風景に取り込む工夫のなされた名庭である。しかし、近年成長しすぎた樹木によって大文字山が見えない状態となるなど維持管理は十分と言えず、作庭当初の風趣が失われつつある。現在は所有者である京都大学を中心に庭園の修復整備事業が進められているが、成長しすぎた樹木を切り下げる際には、作庭当初は存在しなかった近隣の高い建築物への視線を遮蔽しつつ借景の復元をする必要がある。本件のような場合、事前に様々な視点や角度からの景観に配慮した植栽管理を検討するために景観シミュレーションを行うことが有用であると考えられる。本研究では地上型レーザースキャナを用いて、清風荘庭園における借景復元に関する景観シミュレーションを行い、その実用性について考察することを目的とした。さらに、地上型レーザースキャナによって得られたデータを用いて、庭園周辺に現在の京都市の都市計画で許容されている高さの建築物が建てられた場合、庭園からの眺望景観にどのような影響があるかを検討した。