著者
野田 政樹 江面 陽一 早田 匡芳
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

癌の進展においては細胞の接着、及びインテグリンからのシグナルによる細胞の生存、増殖さらには活性化した細胞からのサイトカインの発現により骨の場合には局所のマクロファージや前駆細胞の活性化からはじまる破骨細胞の分化とその活動性の亢進がおこる。このような一連の骨に転移させる活性の高い細胞における転移のメカニズムの解明を目的とし、悪性黒色腫のマウスB16細胞についての検討を行なった。マウスB16細胞の細胞接着とその形態を観察する目的で、まず、細胞における接着反分子の解析について検討した。その結果、細胞接着反のAdhesion Complexの分子群を構成するCIZの発現がB16細胞において確認された。この発現は細胞質にあるとともにまた細胞接着反においても認められた。この分子の接着とのかかわりが推察された。悪性黒色腫の中でも特に転移活性の高いB16F10の細胞とその親株であるB16における細胞の転移活性と接着との相関を検討するとCIZのレベルがB16F10細胞において親株のB16との大きな相違が認められ、この相関が細胞転移活性に関与することが示唆された。更に、癌細胞の骨への転移によって生じる、骨の破壊に関わる破骨細胞の制御について検討を行った。この結果、破骨細胞においてはDicerの特異的なカテプシンKcreに基づくノックアウトより骨量が増加すること、海綿骨の厚さの増加がみられることが明らかになった。この転移のおける破骨破壊をもたらず破骨細胞の分化のレベルの低下は細胞において内因性であり、コンディショナルノックアウトマウスの骨髄細胞の破骨細胞への分化も抑制が観察された。以上の研究成果は悪性黒色腫の骨への転移とその骨における腫瘍に基づく骨破壊の主たる細胞である破骨細胞のメカニズムを明らかにしたものであり、今後これらの分子を抑止する薬剤の探索など癌の転移に対する対策の基盤となる起点が確立された。