著者
湯本 健司 辻 邦和 二藤 彰 野田 政樹
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.237-239, 2003 (Released:2006-12-01)
参考文献数
19

We review here regarding the observations that expression of osteopontin (OPN) was enhanced in the joints of rheumatoid arthritis patients. OPN in arthritic joints had not been clear previously. We published in 2002 that joint destruction in the arthritis model induced by a mixture of anti-type II collagen monoclonal antibodies and LPS (mAbs/LPS) injection was suppressed in the OPN-deficient mice. OPN is a phosphorylated glycoprotein interacts with integrins and CD44, promote the cell attachment and migration. OPN is highly expressed in bone, kidney and ovary and also produced by osteoclasts, endotherial cells, activated T cells and macrophages. One of the functions of OPN in the inflammatory condition is to bring inflammatory cells to the sites of injury and OPN is also a survival factor for the endotherial cells and enhances angiogenesis by promoting the vascular tube formation. Infiltration of inflammatory cells and angiogenesis in synovium in the arthritis model was suppressed in OPN-deficient mice. Additionally, apoptosis of chondrocytes in articular cartilage was reduced and destruction of articular cartilage was suppressed in the arthritis model in OPN-deficient mice. These data suggested that OPN might be a new target for the treatment of rheumatoid arthritis.
著者
野田 政樹 山下 照仁 二藤 彰 田村 正人 川口 奈奈子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本基盤研究においては、骨粗鬆症の病態生理学の基礎となる骨芽細胞・破骨細胞の研究を展開した.その結果、本研究による現在までの骨吸収に関する研究領域の成果としては,カルシウム向性制御因子である副甲状腺ホルモン、ビタミンDやTGFβを含むホルモンおよびサイトカインによって制御されるオステオポンチンのノックアウトマウスを作成し(Journal of Bone and Mineral Research,1998)、このマウスにおいては、閉経後骨粗鬆症モデルを作成すると、骨吸収が明らかに抑制されることから、オステオポンチンが骨粗鬆症の成立の上で重要な促進的役割を持つ分子であることを発見した(Proceedings of the National Academy of Sciences U.S.A.,1999).更に、骨形成領域の研究の成果としては,骨芽細胞機能の制御の分子機構を解析し、新しいBMP制御分子TOBが、特異的に成体の動物の加齢後期において骨の形成の制御に関わることをin vivoで明らかにし(Cell,2000)、Smadの下流におけるCbfaの発現制御の機構(Journal of Biological Chemistry(JBC)1998)、ビタミンDによる抑制性の転写制御因子Idの発現阻害のメカニズム(JBC,1997a)、helix-loop-helix型転写因子Scleraxisの機能の制御(JBC,1997b)、骨・軟骨系の分化に際してのHMG型の転写因子の制御メカニズム(JBC,2000)を発見した。骨粗鬆症において重要な上記のような骨吸収および骨形成に関わる破骨細胞ならびに骨芽細胞の機能の平衡維持のメカニズムの研究領域の成果としては、老化に関わる制御分子、Klothoの機能(Endocrinology,2000;Journal of Endocrinology,2000)、ウィルスの発現系によるKlothoの遺伝子の制御機構(Journal of Gene Medicine,2000)を解明した。さらに本研究の成果として、この重力などのメカニカルストレスがオステオポンチンとKlotho遺伝子がを介する制御(Journal of Experimental Medicine,2001)(Journalof Endocrinology,2001を明らかにした。本基盤研究A(2)の遂行により、骨粗鬆症においてて骨形成・吸収・平衡バランスと老化の3つの主要な局面において中枢的な役割を持つ遺伝子を現在までの研究で解明し、個々の遺伝子の機能の解析に成果を上げた(英文原著39件,国際学会発表57件,受賞13件)。
著者
野田 政樹 江面 陽一 早田 匡芳
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

癌の進展においては細胞の接着、及びインテグリンからのシグナルによる細胞の生存、増殖さらには活性化した細胞からのサイトカインの発現により骨の場合には局所のマクロファージや前駆細胞の活性化からはじまる破骨細胞の分化とその活動性の亢進がおこる。このような一連の骨に転移させる活性の高い細胞における転移のメカニズムの解明を目的とし、悪性黒色腫のマウスB16細胞についての検討を行なった。マウスB16細胞の細胞接着とその形態を観察する目的で、まず、細胞における接着反分子の解析について検討した。その結果、細胞接着反のAdhesion Complexの分子群を構成するCIZの発現がB16細胞において確認された。この発現は細胞質にあるとともにまた細胞接着反においても認められた。この分子の接着とのかかわりが推察された。悪性黒色腫の中でも特に転移活性の高いB16F10の細胞とその親株であるB16における細胞の転移活性と接着との相関を検討するとCIZのレベルがB16F10細胞において親株のB16との大きな相違が認められ、この相関が細胞転移活性に関与することが示唆された。更に、癌細胞の骨への転移によって生じる、骨の破壊に関わる破骨細胞の制御について検討を行った。この結果、破骨細胞においてはDicerの特異的なカテプシンKcreに基づくノックアウトより骨量が増加すること、海綿骨の厚さの増加がみられることが明らかになった。この転移のおける破骨破壊をもたらず破骨細胞の分化のレベルの低下は細胞において内因性であり、コンディショナルノックアウトマウスの骨髄細胞の破骨細胞への分化も抑制が観察された。以上の研究成果は悪性黒色腫の骨への転移とその骨における腫瘍に基づく骨破壊の主たる細胞である破骨細胞のメカニズムを明らかにしたものであり、今後これらの分子を抑止する薬剤の探索など癌の転移に対する対策の基盤となる起点が確立された。