著者
桜田 恵里 星 慎一郎 形井 秀一
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.77-84, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
20

【目的】強皮症を発症し様々な愁訴を持つ患者に、 医学的治療と併用して9ヵ月間の鍼灸治療を行った結果、 良好な経過が見られたので報告する。 【症例】強皮症と診断された50代の女性。 主訴は顔面部の異常感覚、 口腔内の違和感。 薬物治療を継続するが、 顔面の異常感覚、 口腔内の粘り感が続く。 自律神経の調整を目的に鍼灸治療を行った結果、 顔面部違和感に若干の軽減、 レイノー症状、 KL-6値に改善が見られた。 しかし治療の中断、 再開後、 主訴の変化が乏しいため、 触診を重視した治療法に変更した結果、 主訴に対し、 より効果的であった。 【方法】 主訴の自覚症状の変化、 不眠・レイノー症状の頻度、 薬物の服用量、 血液の変化を見た。 【結果】治療開始後、 不眠・レイノー症状の改善、 KL-6値の正常化、 顔面部異常感覚の軽減等が見られた。 触診を重視した治療法は、 より効果的な結果となった。 口腔内の粘り感は不変であった。 【考察】今回の症例は、 継続していた薬物治療に鍼治療を併用することで、 皮膚の異常感覚、 レイノー症状等の強皮症特有の愁訴が改善した。 これらの変化を患者自身が体感することで、 病そのものや、 薬の副作用に対する不安の軽減に繋がったと推察される。