著者
星 良美 赤塚 朋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第60回大会/2017年例会
巻号頁・発行日
pp.91, 2017 (Released:2018-03-06)

【目 的】 中学校の技術・家庭科の授業が少ないことから、技術または家庭科のどちらかの教諭が、配置されるか配置されないことが多い。家庭科の免許状をもった非常勤講師の配置がされることもあるが、他教科の教師が臨時免許状をもち担当していることも多い。また、家庭科の免許状をもった正規教員が配置されていても一校に一人が多く、毎日の校務に追われ教材研究などもままならないのが現状である。さらに家庭科の学習内容は時代と共に変化する内容であり、新任教員や臨時免許状教員に対するカリキュラムを作成する必要性を感じていた。 技術・家庭科の学習指導を進めるにあたり、家庭や地域社会における身近な課題を取り上げて学習したり、学習した知識と技術を実際の生活で生かす場面を工夫するなど、生徒が学習した知識と技術を生活に活用できるような指導が求められている。 そこで、中学校家庭科教員の実態を調査し、カリキュラムを作成するための課題抽出を研究の目的とした。【方法】 学校統計基本調査による教員配置の実態把握、家庭科担当者へのアンケート調査、臨時免許状教員へのインタビュー調査をおこなった。【結果と考察】1.教員配置 家庭科を専門外とする教員が、家庭科の授業をしている現実がある。「平成27年度学校教員統計調査」(2015年3月27日)によると臨時教員免許状による教科担当教員の割合は技術・家庭科が29.3%と教科の中で一番高い値を示している。全体の3割近くが臨時教員免許状で授業が運営されている。 家庭科を専門外とする教員が、家庭科を教えられるのは、教育職員免許法、第二章、第五条、六項の「臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、第一項各号のいずれも該当しない者で教育職員検定に合格したものに授与する」となっている。これにより免許外教科教授担任制が活用されているからである。家庭科では、この免許外教科教授担任制が全国的に導入されていることを確認できる。2.アンケート調査の結果<家庭科の学習内容について> 家庭科の教えやすい学習内容を質問したところ、新任教員、常勤教員、非常勤講師、臨時免許状教員とも「食生活と自立(1)中学生の食生活と栄養」であった。教えにくいところは新任教員、常勤教員、非常勤講師は「家族・家族と子どもの成長(2)家庭と家族関係」が41.2%であったのに対して、臨時免許状教員は、「衣生活・住生活と自立(2)住居の機能と住まい方」が52.2%であった。また「身近な消費者生活と環境(1)家庭生活と消費」は臨時免許状教員は50%、新任教員、常勤教員、非常勤講師41.2%と教えにくい学習内容として値が高かった。<授業形態について> 新任教員や常勤教員、非常勤講師は、調理実習、被服製作実習の学習活動が多いのに対し、臨時免許状教員は「ワークブックの穴埋め」を「よく行う・何度か行う」が95.2%で、授業形態で一番高い値を示した。これは家庭科の非常勤講師の「ワークブックの穴埋め」を「よく行う・何度か行う」が93.2%と同じような高い値を示している。<意見より> 家庭科を臨時免許状で教えている先生の日頃の授業についての意見からは、「家庭・家族をもっていれば家庭科を教えられるという、教科に対する周囲の考え方がある」「家庭科を教えて初めて家庭科の重要性をしみじみ感じている」や「授業や実習をやる前の準備がすごく大変だと感じている」「生徒の学びはとても多く、他教科では見られないような生き生きした姿を見せてくれる子が多いのでやりがいを感じる」などがみられた。3.インタビュー調査 臨時免許状で教えている先生方にインタビューを行い、「すぐできる授業の展開例があると授業がもっとやりやくなるのでほしい」「臨時免許担当教員の研修内容をもっと充実してほしい」 以上のことから、課題が山積している教科の姿が浮き彫りになった。