著者
星野 伸晃 平松 和洋 加藤 岳人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.2444-2448, 2010 (Released:2011-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

症例は52歳,男性.高血圧内服治療中であった.2008年9月,仕事のストレスから自殺を図り,降圧剤を大量に内服し当院へ救急搬送された.緊急入院後,低血圧に対して大量輸液・昇圧剤投与を行った.呼吸不全,腎不全も併発した.集中治療中であった第8病日に突然著明な腹痛が出現した.腹部CT検査にて腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した.術中所見は便汁様腹水があり,バウヒン弁から60cmの小腸から横行結腸にかけて分節状・非連続的な腸管壊死と穿孔を認めた.壊死腸管を切除し回腸,横行結腸に人工肛門を作成した.術後経過は良好で,術後47日で軽快退院した.降圧剤大量服薬によるnonocclusive mesenteric ischemia (NOMI) の本邦報告例はみられないため,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
星野 伸晃 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 久留宮 康浩 法水 信治 高山 祐一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.1951-1958, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:Multidetector-row CT(MDCT)を用いた虫垂炎診断において,単純・造影の診断能を比較しそれらの位置づけを検討した.方法:2008年3月から同年9月の間に当院を受診した全ての虫垂炎疑いの患者104例に単純・造影MDCTを施行し,Multi-planner reformation(MPR)画像を作成した.そのうち蜂窩織炎性,壊疽性または穿孔性虫垂炎と診断された75例の画像をretrospectiveに検討し,虫垂および虫垂壁の描出能,および虫垂周囲脂肪織濃度の上昇,腹水,小腸うっ滞の診断能を単純と造影で比較した.次に造影MDCTをルーチンに行った群(期間A)と最初に単純のみを施行し選択的に造影した群(期間B)でprospectiveに診断精度を比較した.結果:経静脈造影が有意に優れていたのは虫垂壁の描出能だけであり,その他の所見については読影方法により差を認めなかった.期間Aと期間Bで診断精度はほぼ同等であった.結語:MDCTの虫垂炎診断において,単純CTを評価した後に選択的に造影を行う方針が妥当であることが示唆された.