著者
野中 有紀子 神谷 忠宏 加藤 岳人 平松 和洋 柴田 佳久 青葉 太郎
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-34, 2020-01-31 (Released:2020-09-30)
参考文献数
18

【緒言】近年,腹部刺創症例に対する治療戦略は,強制開腹手術から選択的非手術管理に移行している。【目的】当施設における腹部刺創症例について検討した。【方法】2006年1月から2017年12月までの12年間に当施設に入院した腹部刺創症例33例を後ろ向きに検討した。【結果】患者背景は,年齢の中央値が57歳で,男性が23例,女性10例であった。緊急開腹手術を行ったのは24例(72.7%)であり,開腹理由は大網を含めた腹腔内臓器脱出が12例,extravasationやfree airなどのCT所見が12例,不安定な循環動態が4例であった。そのうち術中所見で臓器損傷を認めたのは13例で(重複あり),不必要開腹率は50%であった。【結語】当院の不必要開腹率は過去の報告と比べて高く,腹部刺創症例,とくに大網脱出を認める症例に対する緊急開腹手術の適応を見直す必要があると考えられた。
著者
星野 伸晃 平松 和洋 加藤 岳人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.2444-2448, 2010 (Released:2011-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

症例は52歳,男性.高血圧内服治療中であった.2008年9月,仕事のストレスから自殺を図り,降圧剤を大量に内服し当院へ救急搬送された.緊急入院後,低血圧に対して大量輸液・昇圧剤投与を行った.呼吸不全,腎不全も併発した.集中治療中であった第8病日に突然著明な腹痛が出現した.腹部CT検査にて腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した.術中所見は便汁様腹水があり,バウヒン弁から60cmの小腸から横行結腸にかけて分節状・非連続的な腸管壊死と穿孔を認めた.壊死腸管を切除し回腸,横行結腸に人工肛門を作成した.術後経過は良好で,術後47日で軽快退院した.降圧剤大量服薬によるnonocclusive mesenteric ischemia (NOMI) の本邦報告例はみられないため,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
平松 和洋 関本 衛 長谷川 洋 中村 隆昭
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2125-2129, 1993-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

症例は62歳女性,腹痛,嘔気,嘔吐を主訴として入院した.小腸造影では小腸に憩室を思わせる造影剤の貯留を認め, CTでは骨盤内に充実性の腫瘤を認めた.これらの検査所見より小腸憩室由来の腫瘍を疑ったが第4病日に穿孔性腹膜炎を併発したため手術を施行した.回盲部より約70cm口側,腸間膜対側にMeckel憩室が存在し,その先端に鶏卵大の腫瘍を認め,憩室中央には穿孔を認めた.明らかな他臓器転移は無かった. Meckel憩室を含めた小腸部分切除を施行した.腫瘍は病理組織学的には高分化~未分化腺癌よりなる多彩な像を呈していた.憩室内には異所性胃粘膜が存在し腫瘍はこれより発生したものと推察された.化学療法を施行したが術後9ヵ月で癌性腹膜炎により死亡した. Meckel憩室癌の本邦報告例14例の集計を行い若干の考察を加えた.
著者
伊藤 喜介 平松 和洋 加藤 岳人 柴田 佳久 吉原 基 青葉 太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.1890-1895, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
17

症例は71歳,女性.特記すべき既往歴なし.10年前から緩徐に増大する腹部腫瘤を主訴に当院を受診した.腫瘤は児頭大で表面平滑,可動性は良好であった.腹部CT・MRIにて,膵鈎部尾側に接した10cm大の造影効果のある二層に分かれた境界明瞭な腫瘤を認めた.Castleman病などの良性腫瘍を疑い開腹術を施行した.腫瘤は横行結腸間膜と連続性を認めたが,腫瘍の栄養血管のみを処理し,被膜を損傷することなく摘出した.病理組織学的検査の結果,内側は濾胞樹状細胞腫,外側はHV型Castleman病と診断した.二層に分かれるような発生形態を呈した,腹腔内原発の濾胞樹状細胞腫を伴うCastleman病の報告例はみられないため報告する.
著者
権田 紘丈 青葉 太郎 平松 和洋 有元 淳記
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.99-102, 2021-01-31 (Released:2021-08-20)
参考文献数
10

当院は精神科病床を有しておらず,外科的疾患を有する統合失調症患者に関しては他院から紹介となる場合が多い。今回われわれは,2014月1月から2020年1月までに統合失調症で他院精神科入院中に当院一般外科へ紹介となった急性虫垂炎8例の検討を行った。年齢の中央値は56歳で,全例で同日緊急手術となった。開腹手術が6例,腹腔鏡手術が2例であった。7例は壊疽性虫垂炎で,5例に虫垂穿孔を認めた。術後合併症は4例に生じた。統合失調症の症状で当院での入院継続困難となった症例は1例であった。在院日数の中央値は8日で,退院後は全例で紹介元病院へ転院となった。統合失調症を合併した急性虫垂炎症例では虫垂穿孔および術後合併症の頻度が高く,それらのリスクを考慮したうえで周術期管理に臨む必要があると考えられた。
著者
三竹 泰弘 平松 和洋 加藤 岳人 柴田 佳久 吉原 基 青葉 太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2247-2251, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

症例は78歳の女性で横行結腸癌イレウスに対し,横行結腸切除術を施行した.病理診断は,中分化腺癌,SE(T4),ly1,v1,N0(0/7),H0,P0,M0,Stage IIであった.再発高リスク群であり,術後補助化学療法としてカペシタビンの投与を開始した.投与開始後,発熱性好中球減少症(Grade2),下痢(Grade3),口内炎(Grade3)を発症し入院となった.抗菌薬とG-CSF製剤の投与で発熱性好中球減少症は改善したが,腸炎が重篤化し敗血症性ショックとなった.末消血単核球でdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)蛋白量を測定すると11.8U/mg proteinであり,DPD活性低下症と診断した.