著者
春成 正和 富岡 康浩
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-113, 2004-12-15
被引用文献数
4

横浜市鶴見区の2階建て木造住宅において2003年7月に,外来種アメリカカンザイシロアリIncisitermes minor (Hagen)による被害を確認した.被害は天井裏の構造材に多く見られ,木材の表面を薄く残して内部が著しく食害されており,虫孔の下部には乾燥した砂粒状の糞が小山状に堆積していた.防除は,クロルフェナピル21.44%懸濁剤(ステルス[○!R]SC:ピロール系殺虫剤)水希釈液の被害部への加圧注入と木材表面への残留散布,さらに壁内部(間柱の間)等にはエンペントリン5%炭酸ガス製剤(ブンガノン[○!R]VA:ピレスロイド剤)を噴霧した.この被害家屋を中心に半径約300mの範囲を踏査した結果,43戸の家屋の外周部から本種の特徴的な糞塊が確認され,周辺地域に比較的高密度で生息していることが判明した.地域内の製材所の在庫木材の下にも虫糞が認められたことから,有翅虫による自然分散に加えて,物流に伴う広範囲な分布拡散の可能性も示唆された.