著者
清水 勝 時田 元 越野 陽介 星山 直基 山田 昌夫 高橋 善弥太 西川 佳秋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.690-694, 1989-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

アセトアミノフェン大量服用による急性肝不全はよく知られている.今回著者らは40歳,女性のアルコール常用者が,アセトアミノフェン4.8g(セデスAR錠60錠)をアルコールとともに服用し,急性肝不全で死亡した1例を経験した.剖検肝重量は750g,広汎性部位により亜広汎性肝細胞性壊死が存在し病理学的に急性肝萎縮と診断された.本例の服用アセトアミノフェン量は4.8gと比較的少量であるが,急性肝不全をきたした原因として,1)アルコール常用者であったこと,2)アセトアミノフェンがカフェインとの合剤で服用されておりその相互作用が考えられ文献的に考察した.アセトアミノフェンの使用にあたっては,予想以上に重篤な肝障害発生の危険もあり注意が必要である.
著者
矢倉 道泰 田中 晃久 時田 元 上司 裕史 原田 英治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.19-25, 2005-01-25
被引用文献数
3 5

結婚後50年経ってHCVの夫婦間感染が成立した1例を報告した. 妻は72歳. 1955年出産時に輸血. 1989年に初めて肝機能異常を指摘され, 1992年より当院へ通院. 1992年4月, 肝生検はF1/A1, HCV-RNA8.7Meq/m<i>l</i>. 1992年9月よりIFN-α6MUを2週連投後, 週3回22週投与するも無効. 1994年6月, 肝生検はF1/A1. 同年8月よりIFN-α2b10MUを2週連投後, 週3回22週投与するも無効. 一方, 夫は77歳. 1981年より糖尿病で近医に通院. 1975年より毎年検診を受け, 飲酒による肝障害を指摘されていた. 2000年3月, HCV Ab(-). 2002年9月の検診でGOT358IU/<i>l</i>, GPT700IU/<i>l</i>と異常を指摘され当科受診. HBsAg(-), HCV Ab(+), HCV-RNA31.5KIU/m<i>l</i>. 2003年1月29日の肝生検は軽度の脂肪沈着を認めるalcoholic fibrosis with hemosiderosisの所見であった. 2003年2月より, 高齢で糖尿病があるためIFN-α3MUを週2回投与し9月にHCV-RNA陰性となる. 夫婦のHCV NS5B領域339塩基を増幅し, PCR産物をダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した結果, 夫婦間の配列はともにHCV genotype 1bで99.1%の高い相同性が得られた. 系統樹解析でも有意なクラスター (100%) を形成しており夫婦間の感染が強く示唆された. その後, 夫のHCV抗体価も上昇したことから妻から夫への初感染と診断した. 感染経路は性交渉によるものと推測した.