著者
最上 雄太
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-11, 2022-06-15 (Released:2022-06-24)
参考文献数
35

本論文の目的は,K. J. Gergenが提唱する社会構成主義(social constructionism)の立場および考え方に依拠したリーダーシップ研究である「関係アプローチ」を批判的に検討し理論的課題を指摘することにある.本論文では,従来的なリーダー中心アプローチに指摘される還元主義的な見方に依拠する方法論的限界を乗り越える立場として,関係アプローチの理論的課題を議論した.関係アプローチには,社会的プロセスを捉えるための研究方法論的な議論が不足しているという理論的課題がある.この理論的課題を解決する研究方法論として,関係アプローチと同じ社会構成主義の理論的前提を共有する組織ディスコース研究に着目し方法論としての可能性を探索した.
著者
最上 雄太 阿部 廣二
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.95-115, 2019 (Released:2021-04-12)

本論文の目的は,社会的過程に着眼する関係的アプローチの理論的課題を指摘し,その問題を解決するひとつの可能性として,正統的周辺参加論の視座に立ったリーダーシップ研究の方法論的提案を行うことにある。本論文は,まずリーダーシップ研究の理論的変遷を概観し,関係的アプローチの理論的課題を指摘した。理論的課題とは,第一に社会的過程を捉えるための方法論的議論が不足していること,第二にそうした方法論に社会と個人両方の位相を含む必要があることである。次にその問題を解決する方略を探索し,個人と社会の再帰的関係に着目する再帰的アプローチとして,バトラーおよびケミスとマクタガートの議論をとりあげた。その後そうした再帰的アプローチの具体的な研究の方法的視座として,状況的認知のアプローチのひとつである正統的周辺参加論(legitimate peripheral participation: LPP)をとりあげた。以上をふまえて,LPP の視座を用いた再帰的リーダーシップ研究による方法論を提案し,関係的アプローチのひとつの展開可能性を示した。最後に,本特集の「ネットワーク」という観点における,「個人」という位相の位置づけについて議論した。