著者
金森 寛 會澤 宣一 道端 齊
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

海産動物のホヤは,海水中の5価バナジウムを取り込み,3価にまで還元して血球細胞中に蓄えている。しかし,このホヤによる特異なバナジウム濃縮・還元機構は,未だに解明されていない。本研究計画では,ホヤ由来のバナジウム結合タンパクとその小分子モデル化合物を用いて,ホヤのバナジウム濃縮・還元機構を化学的に解明することを目指して基礎的知見を集積した。1.NADPHによる5価バナジウムの4価への還元:ホヤのバナジウム還元にはNADPHが関与していることが示唆されている。我々は,以前にedta存在下で5価バナジウムがNADPHにより4価に還元されることを報告しているが,本プロジェクトでは,アミノ酸やペプチドなどの生体関連配位子がNADPHによる5価バナジウムの還元を進行させることができるかどうかを調べた。その結果,グリシンやバリンなど,2座配位子としてしか作用できないアミノ酸は,還元を進行させることができないが,アスパラギン酸やヒスチジンなどの3座配位できるアミノ酸や,3座配位可能なジペプチドは,NADPHによる5価バナジウムの還元を進行させることができることを見いだした。2.チオールによる4価バナジウムの3価への還元:我々は,以前にシステインメチルエステルがedta共存下で4価バナジウムを3価に還元することを報告している。今回,部分的ではあるが,ntaが還元反応を進行させることができることを見いだした。アミノ酸やアミノ酸誘導体,およびペプチドの中で,4価バナジウムの還元を補助できるものがないかの探索は,現在も継続中である。ホヤ由来バナジウム結合タンパク中のリシン残基は,1,2において直接関与していない。3.ホヤ由来バナジウム結合タンパクを用いた酸化還元実験は,準備に時間がかかったため,年度内に結論を得ることができなかったが,実験は進行しており,近い将来,結果が得られる予定である。