著者
道端 齊 植木 龍也
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.326-331, 2005 (Released:2013-02-19)
参考文献数
38

Rare metals such as vanadium and cobalt are dissolved in seawater at very low concentrations. Ascidians are known to accumulate extremely high levels of vanadium selectively. Vanadium is accumulated mainly in one type of their blood cells, and the concentration reaches 350 mM corresponding to107times that in seawater. Recently, we isolated vanadium-binding proteins, Vanabinl-5, from an vanadium-rich ascidian, Ascidia sydneiensis samea. Biochemical and structural analyses revealed that Vanabins make a novel protein family which is characterized by 18 conserved cysteine motif. They are thought to act as metal chaperones in ascidian blood cells. Vanabins can be used as an agent for selective bioaccumulation and biosorption of heavy metals.
著者
道端 齊
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.315-320, 1997-01-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
28

High levels of vanadium corresponding 107 tirnes higher than that in seawater are accumulated in the blood cells of ascidians. Among the about ten types of blood cells, the signet ring cells were revealed to be the true vanadocytes. Vanadium in the vanadocytes was reduced to the +3 oxidation state under pH2. The vanadocytes contained the highest level of sulfate and had H+-ATPases in their vacuoles. These findings suggest the possibility that protons, concentrated by H+-ATPases, might be linked energetically to the accumulation of vanadium
著者
金森 寛 會澤 宣一 道端 齊
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

海産動物のホヤは,海水中の5価バナジウムを取り込み,3価にまで還元して血球細胞中に蓄えている。しかし,このホヤによる特異なバナジウム濃縮・還元機構は,未だに解明されていない。本研究計画では,ホヤ由来のバナジウム結合タンパクとその小分子モデル化合物を用いて,ホヤのバナジウム濃縮・還元機構を化学的に解明することを目指して基礎的知見を集積した。1.NADPHによる5価バナジウムの4価への還元:ホヤのバナジウム還元にはNADPHが関与していることが示唆されている。我々は,以前にedta存在下で5価バナジウムがNADPHにより4価に還元されることを報告しているが,本プロジェクトでは,アミノ酸やペプチドなどの生体関連配位子がNADPHによる5価バナジウムの還元を進行させることができるかどうかを調べた。その結果,グリシンやバリンなど,2座配位子としてしか作用できないアミノ酸は,還元を進行させることができないが,アスパラギン酸やヒスチジンなどの3座配位できるアミノ酸や,3座配位可能なジペプチドは,NADPHによる5価バナジウムの還元を進行させることができることを見いだした。2.チオールによる4価バナジウムの3価への還元:我々は,以前にシステインメチルエステルがedta共存下で4価バナジウムを3価に還元することを報告している。今回,部分的ではあるが,ntaが還元反応を進行させることができることを見いだした。アミノ酸やアミノ酸誘導体,およびペプチドの中で,4価バナジウムの還元を補助できるものがないかの探索は,現在も継続中である。ホヤ由来バナジウム結合タンパク中のリシン残基は,1,2において直接関与していない。3.ホヤ由来バナジウム結合タンパクを用いた酸化還元実験は,準備に時間がかかったため,年度内に結論を得ることができなかったが,実験は進行しており,近い将来,結果が得られる予定である。
著者
道端 齊 植木 龍也 宇山 太郎 金森 寛 広津 孝弘 大井 健太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

海水中にはバナジウムやコバルト等わが国ではほとんど産出しない希少金属(レアメタル)が溶解している。これまでに化学的に合成された吸着剤を用いて、これらのレアメタルを海水から捕集する試みは数多くなされてきた。しかし、海水には多くの金属イオンが溶解しているため、目的のレアメタルだけを選択的に分取するのは必ずしも容易ではない。研究代表者のグループはホヤが海水のバナジウム濃度の1,000万倍(10^7)ものバナジウムを高選択的に濃縮することに着目し、その濃縮機構の解明で得られた成果をレアメタルの分取に展開することを計画した。本研究では、ホヤのバナジウム濃縮細胞(バナドサイト)の細胞質から抽出した濃縮のカギを握る12.5kDa、15kDaと16kDaの3種類のバナジウム結合タンパク質(Vanabin)の解析を進めた。その結果、それらをコードするcDNAの全長のクローニングとその解析によってVanabinは{C}-{x(2-4)}-{C}という特徴的なモチーフの繰り返し配列を持ち、金属イオンと結合し易いシステインを約20%も含むタンパク質であること、NMRによって主にαヘリックスから成る新規のタンパク質であること、Vanabin 1モルに約20原子のバナジウムが結合し、その結合定数は10^7Mであることを見出した。さらに本年度の研究により、12.5kDaのVanabinは約10原子の四価バナジウムと結合することが判明した他、15kDaのVanabinは鉄イオンや銅イオンとは選択的に結合しないこと、銅イオンは競争的にバナジウムの結合を阻害することが判明した。一方、この研究期間内では特異的金属結合部位の特定には至らなかったが、現在理化学研究所と共同でVanabinの立体構造の解明を進めつつあり、その結果によっては早晩特異なホヤのバナジウム濃縮機構の解明と応用が期待される。