著者
岩尾 亜希子 藤原 喜美子 長谷川 志保子 上野 京子 太田 久子 長谷川 幸子 櫻井 順子 會田 秀子 中澤 惠子 小市 佳代子 古畑 裕枝 中野 八重美 金子 恵美子 稲垣 一美 柳 努 北原 るり子 山下 小百合 落合 和徳
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.219-227, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
13

院内暴力の現状は,幾つか報告されているが,高度先進医療を担う大学病院に特化した報告はない。私立大学病院医療安全推進連絡会議では,職員が安全に働くための環境を整備する事を目的に2011年に都内私立大学附属病院本院に勤務する全職員29,065名を対象に質問紙による調査を行った。その結果,回収率は78.6%で過去1年以内に院内暴力を受けた人は44.3%だった。更に暴力が原因で「退職したいと思った」が3.7%(1,159名),「死にたかった」が0.2%(58名)いるにもかかわらず個人の対応としては,我慢や謝罪をしている現状が明らかになった。又,各施設で整備されているサポート体制の認知度は低く「サポート体制が無い」,「わからない」と回答した職員が合わせて71.7%だった。院内暴力に対する不安を5段階評価で2以上(何らかの不安を感じている)の職員が86.3%いた事は重く受け止められるべきであり,院内暴力の現状認識と有効な対策の立案が急務であるとともに患者・患者家族との信頼関係の構築が必須である。
著者
李澤 康雄 會田 秀子 雪下 岳彦 湯本 優 李 慶湖 杉田 塩 小林 弘幸
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.243-250, 2011-06-30 (Released:2014-11-11)
参考文献数
18

目的: 点滴注射の際に溶解液として高頻度に用いられる生理食塩液のうち, 両頭針付き生理食塩液の有用性について, 2ポート型ハーフキット生理食塩液と1ポート型ハーフキット生理食塩液の2種類の生理食塩液を対象に, 利便性アンケート調査および無菌操作試験を用いて比較検討した. 方法: 利便性アンケート調査では, 日常業務として点滴注射の調製作業を行っている看護師50名 (経験年数1-20年, 平均経験年数4年9ヵ月) を対象として質問用紙調査を実施した. 解析にはWilcoxonの符号付順位和検定を行った. 無菌性試験では看護師20名 (経験年数1-12, 平均経験年数3年6ヵ月) 実際に点滴調製作業を実施し, その際に作成された点滴溶解液や作業環境の培養検査を実施した. 結果: 利便性アンケート調査では14の調査項目のうち, 「溶解作業時の薬剤の確認のしやすさ」, 「無菌操作に対する注意度」, 「細菌汚染の可能性」, 「緊急使用時の迅速な対応」, 「業務時間短縮の実感」, 「バイアル (抗菌薬) と溶解液の組み合わせによる誤投薬発生の危険度」, 「投薬時の薬剤の確認容易度」, 「廃棄時の手指等のケガ発生の可能性」, 「分別廃棄の手間」, 「総合評価」の10項目において, 2ポート型ハーフキット生理食塩液が1ポート型ハーフキット生理食塩液より有意 (p<0.01) に高い評価を得た. 無菌操作試験の結果では, 作業者の手指からは培養検査により細菌が検出されたが, 溶解作業で作成した溶解液を培養検査した結果では, 細菌は検出されなかった. 考察: 両頭針付き生理食塩液は総じて有用と判断され, なかでも2ポート型ハーフキット生理食塩液は1ポート型ハーフキット生理食塩液よりも利便性の面で総合評価が高く, より有用であると考えられた.