著者
有井 薫 公文 義雄 池田 幸雄 末廣 正 橋本 浩三
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.72, 2007

【目的】関節リウマチ(RA)の病態形成に酸化ストレスの関与が示唆されているが、これまでに実際にRA治療で臨床応用されている抗酸化剤は今のところない。我々は、脳梗塞を発症した関節リウマチ患者をフリーラジカル消去剤である塩酸エダラボン(Ed)で治療した際、RA活動性が低下した1例を経験した。そこで、RAの病態形成に及ぼすEdの影響についてin vitro、in vivoの検討を行なった。【方法】RA患者より採取したヒト滑膜細胞(SC)を培養し、IL-1βで刺激したSCの増殖能や遊走能、IL-6、MMP-3産生能、caspase-3/7活性に与えるEdの影響を検討した。また、細胞内転写因子であるNF-κBに与えるEdの影響についても検討した。in vivoの検討では、雄性DBA/1J マウスにコラーゲンで関節炎を誘発させ、Edによる治療効果を関節炎スコアで評価した。【結果】IL-1β刺激により増加したSCの増殖能・遊走能、およびSCからのIL-6、MMP-3産生はEdにより有意に抑制された。IL-1β刺激により抑制されていたSC のcaspase-3/7活性はEdにより有意に回復した。また、IL-1β刺激により活性化されたNF-κB活性は、Edにより有意に抑制された。雄性DBA/1J マウスを用いたコラーゲン誘発性関節炎の肉眼的関節炎スコアはEdの静脈内投与により有意に低下した。【結論】EdはRAの病態形成に対し抑制的に作用し、新しい治療薬となりえる可能性が示唆された。