著者
岩崎 泰正 橋本 浩三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.747-751, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

ACTH単独欠損症は下垂体前葉ホルモン6種類のうちACTHのみの分泌障害により副腎不全を来す疾患である.近年報告例が増加しており,決して稀な疾患ではない.また不全型(潜在型)の例も存在することから,全身倦怠感などの症状に加え低血糖,低ナトリウム血症,好酸球増多傾向など副腎不全を疑わせる所見を認めた場合には負荷試験で下垂体・副腎系の予備能を評価することが望ましい.
著者
近澤 宏明 西谷 皓次 橋本 浩三
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.57-63, 1998-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は46歳女性. 31歳時頃から両眼の異物感,口腔内乾燥感,レイノー現象,多発性関節痛を自覚していた.最近,起立・歩行時のふらつき,発汗異常,顔面や頚部に発作性の紅潮などが出現するため,精査加療目的にて入院となった.入院時検査にて,乾燥性角結膜炎,耳下腺造影にて末梢導管の消失,小唾液腺生検で導管周囲に単核細胞浸潤を認め,抗SS-A抗体が陽性であり,原発性シェーグレン症候群(SjS)と診断した.同時に,感覚優位の多発性単神経炎型の末梢神経障害,起立性低血圧, Adie瞳孔,発汗テストで脊髄髄節に一致する分節性の無汗領域を認めた.本例はSjSに末梢・自律神経障害を伴った稀な一例と考えられた.
著者
橋本 浩三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.12, pp.2320-2325, 1997-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
18

自己免疫性視床下部・下垂体疾患としては,現状ではリンパ球性下垂体(前葉)炎やリンパ球性漏斗神経葉炎があげられる.リンパ球性下垂体炎は女性に多く,約6割が妊娠中や分娩後に発症する.橋本病,自己免疫性副腎炎, IDDMなどの他の自己免疫姓疾患を合併することが多く,抗甲状線抗体,抗下垂体抗体陽性例も多い.組織学的には下垂体前葉にCD4陽性のTリンパ球や形質細胞の浸潤,線維化,下垂体の破壊像が見られる.リンパ球性漏斗神経葉炎では,自己免疫性炎症が漏斗後葉系に生じ,尿崩症の原因になっている. ACTH単独欠損症の原因は単一ではないが,自己免疫疾患の合併が多く,抗下垂体抗体の陽性例も多いことより,自己免疫性の下垂体炎がかなりの例で原因になっていると推定されている.抗下垂体抗体の測定は,これらの疾患の診断の参考になるが,現状ではその方法や意義にまだ問題が残されている.
著者
有井 薫 公文 義雄 池田 幸雄 末廣 正 橋本 浩三
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.72, 2007

【目的】関節リウマチ(RA)の病態形成に酸化ストレスの関与が示唆されているが、これまでに実際にRA治療で臨床応用されている抗酸化剤は今のところない。我々は、脳梗塞を発症した関節リウマチ患者をフリーラジカル消去剤である塩酸エダラボン(Ed)で治療した際、RA活動性が低下した1例を経験した。そこで、RAの病態形成に及ぼすEdの影響についてin vitro、in vivoの検討を行なった。【方法】RA患者より採取したヒト滑膜細胞(SC)を培養し、IL-1βで刺激したSCの増殖能や遊走能、IL-6、MMP-3産生能、caspase-3/7活性に与えるEdの影響を検討した。また、細胞内転写因子であるNF-κBに与えるEdの影響についても検討した。in vivoの検討では、雄性DBA/1J マウスにコラーゲンで関節炎を誘発させ、Edによる治療効果を関節炎スコアで評価した。【結果】IL-1β刺激により増加したSCの増殖能・遊走能、およびSCからのIL-6、MMP-3産生はEdにより有意に抑制された。IL-1β刺激により抑制されていたSC のcaspase-3/7活性はEdにより有意に回復した。また、IL-1β刺激により活性化されたNF-κB活性は、Edにより有意に抑制された。雄性DBA/1J マウスを用いたコラーゲン誘発性関節炎の肉眼的関節炎スコアはEdの静脈内投与により有意に低下した。【結論】EdはRAの病態形成に対し抑制的に作用し、新しい治療薬となりえる可能性が示唆された。