著者
山崎 文靖 佐藤 隆幸 柿沼 由彦 有川 幹彦
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中高年を好発年齢とする進行性の神経変性疾患では、動脈圧受容器を介した交感神経系による血圧調節機能が廃絶するため、重度の起立性低血圧や失神発作をおこし、末期には寝たきり状態となるが、重症例における治療法はない。そこで本研究では、二年間の実験的臨床研究により、非侵襲的な血圧制御システムを開発する。1.動脈圧反射の開ループ伝達関数の推定:自律神経失調患者と健常成人男性より求めた開ループ伝達関数Hnative(f)はlow-pass特性を示し、0.01Hz以上でゲインが徐々に減少した。定常ゲインは5.3であった。2.圧迫帯圧から動脈圧までの伝達関数HSTM-SAP(f)の推定:自律神経失調患者での平均ステップ応答関数では、圧迫帯圧の上昇に伴い動脈圧は10秒以内に定常状態の90%に達した。定常ゲインは0.7±0.3mmHg/mmHgであった。3.ヒトの血管運動中枢の動作原理の記述:同定した平均的なHSTM-SAP(f)を用いて,ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いをシミュレーションし,比例補償係数Kp=0.4,積分補償係数Ki=0.2で,サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償することをみいだした。この係数を用いた制御部Hl(f)を伝達関数として記述し、人工血管運動中枢を製作した。4.非侵襲的人工的圧反射装置の構築と有用性の検証:開発したデバイスは、人工血管運動中枢を搭載したPC、血圧モニタ、電磁弁装置、圧搾空気ボンベ、腹部圧迫帯からなる。3例でその効果を検討した。起立時に平均20mmHg低下した平均血圧は、装置の作動により11mmHgの低下に抑制することが可能であった。5.下肢圧迫による動脈圧制御の可能性:下肢圧迫の効果を検証するために、両下肢に圧迫帯を装着し応答性を検討した。圧迫帯内圧の上昇に対し動脈圧は20秒以内に最大反応値に達した。