著者
有海 順子 四日市 章
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.353-362, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
11

本研究では、聴覚障害学生に対するパソコン通訳支援について、学生通訳者の「支援経験」「入力方式」「専門知識」に着目し、大学授業における情報の訳出率を分析した。その結果、通訳者は講義音声の中から実質的文節と重要文節を選択的に訳出していた。専門用語の訳出では、専門知識の有無による影響がみられ、支援対象講義と支援学生の専門性を考慮した通訳者配置が重要であることが示された。支援経験については、経験者のほうが初心者よりも10%程度多くの情報を訳出しており、その差は有意であった。1名による単独入力では発話全体の20~50%、2名による連係入力では40~80%が訳出されており、連係入力のほうが1.5~2倍の情報を提供しうることが示された。また、連係入力では、各通訳者の条件によって提供できる情報量が変わりうることが示唆された。