著者
和田 哲郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1146-1151, 2018-09-20 (Released:2018-09-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

感音難聴は治療が困難なことが少なくない. 代表的な感音難聴疾患である突発性難聴についても, 現在までにエビデンスの確立した治療法は存在しない. だからこそ, 現時点で最善と考えられる治療戦略を理解し, その有効性と注意点に配慮しつつ日々の臨床を行っていくことが肝要である. 先ごろ, 平成26~28年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業難治性聴覚障害に関する調査研究班 (代表: 宇佐美真一) により,「急性感音難聴の診療の手引き」が作成され, 最新の知見がまとめられた. この手引きの内容を踏まえて, 感音難聴の治療について現場の医師が抱くであろうクリニカルクエスチョンへの回答を概説する. また近年, 治療が困難な感音難聴について, 予防を推進していく取り組みがいくつか始められている. 現状で最善と考えられる治療を行いつつ, 並行して予防にも取り組んでいくことが感音難聴の克服のために重要と考える.
著者
和田 哲郎 廣瀬 由紀 西村 文吾 星野 朝文 上前泊 功 田渕 経司 大久保 英樹 原 晃
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.61-67, 2012
被引用文献数
1

平成13年の医師法の一部改正により聴覚障害者が医師になることが可能となった。しかし, 医学教育で求められる極めて多くの情報を, どのように聴覚障害医学生に伝えるかという方法論は確立されておらず, 公的な支援制度もない。我々は, 上記の医師法改正後, 全国で3人目となる聴覚障害医学生を受け入れた。様々な関係団体と協力し, 本人の日常コミュニケーション手段である手話あるいはパソコン要約筆記を用いて情報保障に努めた。講義にはパソコン要約筆記が, 臨床実習では手話通訳が有効であった。しかし, 専門用語など特殊な内容が多いため, 対応可能な手話通訳者の養成と確保などの課題も明らかとなった。スムーズな支援のためには, 1) リーダーシップ, 2) きめ細かな連絡, 3) 信頼関係が鍵になると考えられた。個々の障害学生の希望と教育環境によって対応は変わってくると考えられるが, このような経験が蓄積, 共有され, 今後の聴覚障害学生教育の一助となることを希望し報告する。
著者
中山 雅博 吉村 知倫 芦澤 圭 中馬越 真理子 廣瀬 由紀 星野 朝文 西村 文吾 田中 秀峰 上前泊 功 田渕 経司 大久保 英樹 高橋 和彦 和田 哲郎 原 晃
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Supplement1, pp.s113-s117, 2013-03-05 (Released:2014-03-05)
参考文献数
6

2002年1月から2011年12月までの10年間に当科において初回手術を施行した甲状腺腫瘍38例につき臨床的検討をした。性差は女性に多く, 男女とも50歳代, 60歳代に多かった。組織型は良性11例, 悪性27例であった。良性は全例が腺腫様甲状腺腫で, 悪性は乳頭癌が24例, 低分化癌が2例, 未分化癌が1例であった。主訴は頸部腫瘤が最も多く, 嗄声, 咽喉頭異常感と続いた。手術は良性では葉峡切除を, 悪性では総合的判断により全摘, 亜全摘, 葉峡切除を施行した。頸部リンパ節郭清は気管傍リンパ節と気管前リンパ節の郭清は悪性腫瘍の全例に行った。治療成績は未分化癌の1症例の死亡例以外は, 現在まで生存している。再発症例は6例あった。

1 0 0 0 OA 蝸電図検査

著者
原 晃 和田 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.45-53, 2008-02-28 (Released:2010-08-05)
被引用文献数
1

音刺激により生じた内耳及び蝸牛神経由来の電気的反応を, 鼓室内あるいは外耳道深部に電極をおいて検出する方法が蝸電図検査 (Electrocochleogram, ECochG) である。誘発される電気現象の構成成分として蝸牛マイクロホン電位 (CM), 加重電位 (SP), 蝸牛神経複合活動電位 (CAPまたはAP) があり, 音刺激からおおよそ3msec以内に認められる。聴性脳幹反応 (ABR) に比べ, 電極留置にやや煩雑な面はあるものの, より蝸牛近傍の情報が得られ, 病態の理解・診断に有用である。本稿では蝸電図検査の意義, 検査法, 適応について概説した。