著者
有田 峰太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ポリオウイルス(PV)擬似粒子を用いてPVレセプター発現マウス(TgPVR21マウス)に残存性ポリオ様麻痺を生じさせる条件を確立し、残存性ポリオ様麻痺を長期間生じさせたマウスについて解析した。また、ポリオ後症候群の発症に関与する宿主遺伝子群を同定することを目的とし、PVの複製を阻害する化合物の探索を行った。結果、4.1×10^6感染単位以上のポリオウイルス擬似粒子を脊髄内に接種した場合、ほぼ全てのマウスが重篤な残存性ポリオ様麻痺を呈した。このマウスを運動負荷の有無で6ヶ月間飼育したが、誘導されたポリオ様麻痺と運動負荷を原因とする異常を確認することができなかった。PV複製を阻害する化合物として、GW5074(Raf-1阻害剤)を同定し、GW5074と協調的に働くキナーゼ阻害剤としてMEK1/2阻害剤、EGFR阻害剤、PI3K阻害剤を同定した。GW5074に対する耐性変異を同定し、阻害機構が不明である既知の抗ピコルナウイルス化合物enviroximeに対する耐性変異と同じ変異であることを見出した。さらに、GW5074が宿主のphosphatidylinositol 4-kinase III beta (PI4KB)の活性を阻害することによりPVの複製を阻害することを見出し、PI4KBがenviroxime様化合物のエンテロウイルス複製阻害活性の標的の一つであることを明らかにした。
著者
有田 峰太郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

抗エンテロウイルス薬の候補化合物は、ウイルスタンパク阻害剤、宿主のPI4KB/OSBP阻害剤に分類された。PI4KB/OSBP経路は、ウイルスRNA合成過程ではなく、ウイルスの複製の場の形成に必要であり、複製の膜上にフリーのコレステロールを蓄積する役割を果たしていた。これらの結果は、抗エンテロウイルス薬の開発において宿主因子に対する阻害剤に注目する場合には、PI4KB/OSBP経路の阻害剤の有効性を検討する必要性があることを示唆する。