著者
小野 祐嗣 磯田 豊 工藤 勲 宮園 章 有田 駿
出版者
北海道大学大学院水産科学研究科
雑誌
北海道大学水産科学研究彙報 (ISSN:13461842)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.47-59, 2015-08

北海道オホーツク海側の沿岸に沿って南下する宗谷暖流は,宗谷海峡を挟む日本海とオホーツク海の水位差(圧力勾配力)によって駆動されている(青田,1975)。実際に,係留流速計・HFレーダ・海底設置型ADCP等を用いた長期流速記録と現場の水位差記録(稚内と網走の水位差)の間には高い相関があり,宗谷暖流はその水位差が極大となる夏季に流量増加,水位差がほとんどなくなる冬季にはほぼ消滅という明瞭な季節変化を示す(例えば,松山ほか,1999; Fukamachi et al.,2008; Ebuchi et al.,2009)。宗谷暖流は基本的に水位差駆動されているので順圧流が支配的であるが,成層が発達する夏季には傾圧流量の寄与が順圧流量の半分弱程度になるという見積もり報告もある(Matsuyama et al.,2006)。夏季の宗谷暖流の沖合境界表層に出現する冷水帯は,順圧流と傾圧流が相互作用した結果として理解されている。例えば,Ishizu et al. (2006)は順圧流の強い水平シアーから生じる海底エクマン収束が鉛直循環流を生成し,冷たい底層水が海面まで湧昇するという物理機構で冷水帯の形成を説明している。