著者
有賀 広志 小田 康一 西村 安代 福元 康文
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.14-23, 2015-03-01 (Released:2015-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

農業用被覆資材の簡便な断熱性評価法の検討と,フッ素フィルムの複重化による保温効果について調査した.フィルム上下に断熱性の高い発泡ポリスチレンを主とするスペーサーで空気層を確保し,市販の熱伝導率測定装置を使用して熱貫流率を測定する方法は,1時間程度で測定が終了し,その値の再現性は高い.また,文献などで報告されている熱貫流率の値と高い相関(R2=0.910)が認められたことから,農業資材の相対的断熱性評価の簡便な方法として利用可能と示唆された.温室被覆資材は放射透過率の影響が大きいため,屋外と同じような放射冷却を模擬できる条件で評価する必要がある.本方法では高温プレートから低温プレートへの熱放射があり,ハウスの実態を模擬していると考えられた.また,熱貫流率に対して,遠赤外線透過率が大きな影響を与えることを確認した.さらに,フッ素フィルムの1重ハウスおよび2重ハウスの屋外展張試験において,厳冬期の最低気温の平均は0.7 ℃,3.0 ℃それぞれ屋外より高くなり,特に2重ハウスにおいて保温性の改善が認められた.