著者
浜口 弘 有馬 正高
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.551-552, 2000-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

知的障害児者居住施設における急性死57例のアンケート結果を得た.死因として, 突然死が20例認められ, 残りは虚血性心疾患11例, てんかん重積発作8例, 脳血管障害7例, 呼吸器疾患6例, その他5例であった.突然死群では, 情緒障害などの中枢神経症状のために向精神薬を内服していた例が他の死因群に比して多く認められた.この突然死群の向精神薬内服状況を東京近郊の居住施設入所者の状況と比較すると, 有意に向精神薬の種類が多く, 中には内服量も通常量を越える例が認められた.多種多量の向精神薬を必要とする情緒・行動障害にも問題はあると思われるが, 向精神薬自体に突然死を引き起こす危険があることを念頭に置く必要性がある.
著者
矢野 英二 北原 佶 有馬 正高
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.359-371, 1978-09-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

乳児の頸定遅延の要因について分析するため, 正常乳児250例, 異常児152例の頸定の時期を検討した. また, 正常乳児28例, 脳性麻痺児 (以下C. P. 児) 16例, 精薄児 (M. R. 児) 11例, Werdnig-Hoffmann病 (W.-H. 病) 4例, Congenital Progressive Muscular Dystrophy (CMD) 3例, 水頭症4例については, Traction Responseの表面筋電図学的研究を行なった. またLandau responseと頸定の相関についても検討した.1) 正常乳児250例の頸定の時期は (3.20±0.51月) で, 3ヵ月にピークがあり, 153例 (61%). 4ヵ月までには, 1例を除き全例可能となった.2) C. P. 児 (6.11±3.82月), M. R. 児 (5.30±2.31月), Down症候群 (5.68±1.74月) CMD (5.63±2.95月) の患児では半数以上に頸定の遅延を認めた (mean±SD).3) Traction responseの表面筋電図学的検討は, 頸定の完成した正常児群では, 中間位までに活発な筋放電を認め, 垂直位では, 消失するパターンを得た. 3生月未満の末頸定群でも, 引き起こしと同時に前頸筋に放電が得られたが, 垂直位になっても持続する例がかなりみられた. 頸定が完成している乳児でも, 未完成の乳児でも, 引き起こしで放電が誘発されるので, 2ヵ月未満の成熟乳児の頸定の未完成が立ち直り反射の未発達によるとする記録は得られなかった. C. P. 児群では, 全般的にVoltageが高く, 不規則で, 特に垂直位の状態においても不安定な筋放電の持続を認め, 筋トーヌスの保持機能に障害があるものと推測された. 重度精薄の患児では, 抗重力筋の収縮がほとんど起こらず, 反射機構に何らかの異常があると考えられた. W.-H. 病およびCMDでは, 全体的に筋活動が著明で, 垂直位でも持続的な筋収縮を認め, 頭部立位保持の努力がうかがわれた.4) Landau responseと頸定の相関では, 正常乳児未頸定群, 頸定群ともにNeck extentionは可能であるが, C. P. 児, M. R. 児の未頸定群では, 約半数にしか達していない. 一方, C. P., M. R. 児の頸定群では, 全例可能であった.5) 頭部の垂直保持機構に関しては, 少なくとも, 筋肉, 結合織, 骨, 靱帯などの支持組織の発達が十分であり, また中枢神経系, 特にRighting reflexを中心とした姿勢反応の成熟が必要で, 加えて, 安定した筋トーヌスの保持機能の発達が大きく関与しているものと考えられた.
著者
野田 泰子 坂井 香織 東條 恵 桜川 宣男 有馬 正高
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:18847668)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.82-85, 1990

典型的な重症型ネマリンミオパチーで, 9歳の現在まで生存している女児例を報告した. 筋症状は重度で, 抗重力運動はほとんどみられない. これら非進行性の筋症状にもかかわらず, 肺性心は徐々に進行している.乳児期より発症する重症型ネマリンミオパチーは, 予後不良な疾患で, 多くは2歳までに呼吸不全のため死亡する. この型のネマリンミオパチーとして, 本症例は, 調べ得た範囲では, 世界最年長である.<BR>重度の障害にもかかわらず, 言語指導, 電動車椅子の導入により, 患児の生活範囲は, 拡大しつつある.