著者
服部 友紀子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.258, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
3

エリスロポエチンは,エリスロポエチン感受性を有する後期赤芽球系前駆細胞に作用し赤血球産生を促進する.しかし,溶血や敗血症,遺伝的骨髄不全疾患などの貧血患者においてはこの応答性が十分でなく,エリスロポエチン治療に抵抗性を示す.したがって,このような貧血の治療には,同じく赤血球産生増加作用を有するグルココルチコイドが用いられる.しかし,グルココルチコイドは骨粗しょう症,肥満,高血圧,糖尿病といった様々な副作用を誘発することから,患者の生活の質を高められるよりよい治療法の確立は早急な課題である.本稿では,核内受容体であるペルオキシソーム増殖活性化受容体α(peroxisome proliferator-activated receptor α:PPARα)の活性化がグルココルチコイド依存的な赤血球産生を促進することを見いだし,エリスロポエチン抵抗性貧血に対する新たな治療法となる可能性を示したLeeらの報告について紹介する.なお、本稿は下記の文献に基づいて、その研究成果を紹介するものである。1) Wessely O. et al., EMBO. J., 16, 267-280 (1997).2) Lee H. Y. et al., Nature, 522, 474-477 (2015).3) Flygare J. et al., Blood, 117, 3435-3444 (2011).