著者
内藤 幹彦 服部 隆行
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々は標的タンパク質を人為的にユビキチン化してプロテアソーム分解を誘導する各種のSNIPER化合物を開発してきたが、新規標的タンパク質を分解するSNIPER化合物を開発するためにはその標的タンパク質に結合するリガンドが必要である。しかし適当な結合リガンドが無いためにSNIPERを開発できない標的タンパク質も多い。そこでHisタグを付加した標的タンパク質を細胞に発現させ、Hisタグを認識するSNIPERで標的タンパク質をユビキチン化する実験系の開発を行った。まずHisタグと結合するNi-NTAをIAP antagonist(MV1)と繋いだSNIPER(His)を合成したが、分子全体の親水性が高くほとんど細胞内に取り込まれない事が明らかになった。そこでSNIPER(His)の細胞への透過性を高くするために、細胞膜透過性ペプチド(CPP)をSNIPER(His)に付加した化合物を各種合成し、そのHisタグ標的タンパク質分解誘導活性を調べた。その結果、R9及びTatペプチドを付加したSNIPER(His)はいずれも細胞内透過性が高まり、Hisタグ標的タンパク質を分解する活性を示した。また別の方法として、His-CPPペプチドを利用してSNIPER(His)を細胞内に取り込ませる方法を検討した。細胞の外でSNIPER(His)とHis-CPPの複合体を形成させて細胞内に取り込ませた後、細胞内でHis-CPPと乖離したSNIPER(His)に改変型HisタグであるCH6タグ標識タンパク質が結合してユビキチン化と分解を誘導するメカニズムである。CH6タグ標的タンパク質への結合を強固にするために、SNIPER(His)にマレイミド基を導入して共有結合する様に改変した。その結果、His-CPPペプチドを利用した実験系でもSNIPER(His)によってCH6タグ標的タンパク質の分解を誘導できることが明らかになった。これらの結果から、SNIPER(His)で細胞内のHisタグ(又はCH6タグ)標的タンパク質を分解する実験系を樹立する事ができた。