著者
大岡 伸通 内藤 幹彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.41-45, 2020 (Released:2020-01-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年、細胞内の狙ったタンパク質を特異的に分解する化合物を創製する技術が開発され、新しい低分子薬の創薬モダリティとして製薬業界やアカデミアを中心に大きな注目を集めている。本稿では、これらの化合物の総称として定着しつつあるPROTAC(Proteolysis-targeting Chimera)の開発経緯、医薬品開発企業の動向、従来の低分子薬とは異なる特徴や将来の展望などについて概説する。
著者
築茂 由則 鈴木 孝昌 内藤 幹彦
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.71-80, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
32

近年のゲノムデータの蓄積により, 遺伝情報を利用した個別化医療は現実のものとなりつつある. 特にがん化学療法の分野では, 肺がんにおけるEGFRに代表されるように, 遺伝子変異の有無を判別して治療薬を選択する時代に入っている. 我が国では2013年に, 分子標的治療薬の効果を判定するための体外診断薬 “コンパニオン診断薬” が新たに定義され, すでに複数の品目が承認されている. 本稿では, 主にがん分子標的治療薬との関連からコンパニオン診断薬の現状と課題について概説する.
著者
内藤 幹彦 服部 隆行
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々は標的タンパク質を人為的にユビキチン化してプロテアソーム分解を誘導する各種のSNIPER化合物を開発してきたが、新規標的タンパク質を分解するSNIPER化合物を開発するためにはその標的タンパク質に結合するリガンドが必要である。しかし適当な結合リガンドが無いためにSNIPERを開発できない標的タンパク質も多い。そこでHisタグを付加した標的タンパク質を細胞に発現させ、Hisタグを認識するSNIPERで標的タンパク質をユビキチン化する実験系の開発を行った。まずHisタグと結合するNi-NTAをIAP antagonist(MV1)と繋いだSNIPER(His)を合成したが、分子全体の親水性が高くほとんど細胞内に取り込まれない事が明らかになった。そこでSNIPER(His)の細胞への透過性を高くするために、細胞膜透過性ペプチド(CPP)をSNIPER(His)に付加した化合物を各種合成し、そのHisタグ標的タンパク質分解誘導活性を調べた。その結果、R9及びTatペプチドを付加したSNIPER(His)はいずれも細胞内透過性が高まり、Hisタグ標的タンパク質を分解する活性を示した。また別の方法として、His-CPPペプチドを利用してSNIPER(His)を細胞内に取り込ませる方法を検討した。細胞の外でSNIPER(His)とHis-CPPの複合体を形成させて細胞内に取り込ませた後、細胞内でHis-CPPと乖離したSNIPER(His)に改変型HisタグであるCH6タグ標識タンパク質が結合してユビキチン化と分解を誘導するメカニズムである。CH6タグ標的タンパク質への結合を強固にするために、SNIPER(His)にマレイミド基を導入して共有結合する様に改変した。その結果、His-CPPペプチドを利用した実験系でもSNIPER(His)によってCH6タグ標的タンパク質の分解を誘導できることが明らかになった。これらの結果から、SNIPER(His)で細胞内のHisタグ(又はCH6タグ)標的タンパク質を分解する実験系を樹立する事ができた。