著者
服部 晃 服部 麗波 田邉 直仁 岩田 文英
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.650-660, 2015

東日本大震災の1年後に行なった本アンケート調査 (7,811回答, 男女比: 1.9, 14~91歳) で, 被災の影響がターミナル (ケア) 意識に現われているかどうかを, 検討した。 被災の有無を問うと全体で約11%が直接的被害を受けていた。高被災 (約55%) 地 (福島, 茨城県) と周辺3県 (秋田, 新潟, 長野県) (被災14.5~3.2%) における, 被災者と非被災者の4群について, 回答者特性およびターミナル意識に関する12質問の結果を比較した。また被災の精神保健面の解析や現状を対比した。 高被災地では被災者群の非被災者群に対する陽性要因は女性, 若年で, 女性に限ると看護 (看) 学生, 医療・福祉 (医福) (職) であり, 男性に限ると医福のみであった。男女比較では, 女性は一般 (職), 看学生が多かった。 質問に対する被災者の所見に男女の違いがあった。男性では被災により, “日常宗教あり”, “ターミナルケアよく知る”, “本人告知が望ましい”, そして“麻薬十分に使用する”, “ターミナルで宗教家に会う”, という希望が増えた。女性では, %ldquo;最後の場所は自宅で”が増加したのみであった。 最後の所見について, 全体集計を再検討すると, もともと, 男性に比べ, 女性, 特に壮年期の一般職の女性は, 自宅希望率が抑制されていた。今回の所見は被災がその抑制を解いたことを示した。精神面における被災の誘導要因には性 (女性), 場所, その他があり, 今回の結果との共通点も推定される。 結論: 被災体験は今回調査したターミナル (ケア) に関した意識の一部に影響を与えた。性差の理由や機序, 今後の経過, 対策があるか, などには課題が残る。
著者
服部 晃 田邊 直仁 岩田 文英 服部 麗波
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.637-649, 2015
被引用文献数
1

ターミナルは人生の最後の舞台とも言え, 主役の希望に沿って医療・福祉者は真摯な対応を求められる。患者や家族の希望を知ることが, 容易とは限らない。調査目的は, 2008年佐渡でのアンケート調査で, ターミナル告知が大きく許容されていると思われたことから, 広い地域で, 大規模に, 広い年齢層で, 性, 身分・職種の差を検討し, 佐渡調査で私たちが提案した, 本人, 家族の意向に沿った予想告知率を調べることであった。自由参加・無記名によるアンケート調査を行なった。質問の内容および回答選択肢は佐渡方式で, 年齢14~91歳, 女/男比1.9, 高校生, 看 (護) 学生, 医療・福祉 (医福) 職, (その他) 一般職に層化して特徴を調べた。告知は本人―, 家族―, 一般―告知を調べ, また, 本人と家族の意向に沿った予想告知率を算出し, これまでと比較した。 114病院中74病院から7,811の有効回答をえた。本人告知希望は76%, 一般告知は29%, 家族告知は35%であった。推移: 本人希望は徐々に増加し, 告知拒否は減少した。本人と家族との意向に沿った予想告知率は85%と最高。高校生, 看学生の認識の特徴, 若年者と高齢者は共通点とともに対蹠的所見も呈すること, 各種の年齢・性・職種差があった。それらの把握が応用面で重要と考えられた。最期の場所に関する中年女性の変貌, 職種による男女差が注目される。告知許容社会への移行があり経時的な調査が必要。ターミナルの悩みに正対し改善を計ることは, 社会や宗教にとっても重要であろう。