著者
望月 昂 中濵 直之
出版者
The Editorial Board of The Journal of Japanese Botany
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.227-232, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
21

兵庫県宝塚市において,タチカモメヅルとスズサイコの雑種が見出されたため,Vincetoxicum glabrum (Nakai) Kitag. × V. pycnostelma Kitag.(新和名イマズミカモメヅ ル)として報告する.本種は茎葉および花において推定親種の中間的な形質を示すが,タチカモメヅルからは,直立する茎をもつこと,葉の幅が狭いこと,副花冠が三角形でなく長楕円形であり,背軸面が丸みを帯びていることで区別でき,スズサイコからは,茎の先端が弱くつる状になること,葉は針形でなく披針形であること,花弁の幅がより広く,副花冠の幅がより狭いことから区別ができる.核ETS領域の配列を比較したところ,本種には6箇所に親種由来の塩基重複がみられたため,本種がタチカモメヅルとスズサイコの雑種であることが支持される.また,親種からは記録されていない訪花昆虫がイマズミカモメヅルで観察されたことから,雑種形成が新たな送粉者の獲得につながった可能性があり,カモメヅル属の多様化プロセスにおける雑種形成の重要性が示唆される.
著者
望月 昂
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

被子植物の大多数は花粉運搬を動物に委ねており,系統の離れた植物にあっても,送粉者を共有する植物は色やにおい,形態など複数の類似した花形質:送粉シンドロームを持つ. 申請者による先行研究から,アオキをはじめとする,短い花糸を持ち皿状で暗赤色の5mm程度の花をつける5科の植物は,専らキノコバエ類に送粉されることが明らかになっており, 共有された花形質は送粉シンドロームであると予想されている. 本研究では, ニシキギ属植物をモデルとした送粉様式の進化過程の解明, および, 花のにおいの送粉者誘引における機能解明により, 被子植物における新規の送粉シンドロームのバイオロジーに関する統合的理解を得る.