著者
田中 裕人 外崎 菜穂子 望月 洋孝 間々田 理彦 原 珠里
出版者
東京農業大学農業経済学会→食料・農業・農村経済学会 (121号-)
巻号頁・発行日
no.118, pp.73-83, 2014 (Released:2014-07-07)

本研究は,新潟県佐渡市の訪問者を対象として,AHPを適用して,トキの野生復帰に関する効果の評価を行った。トキの野生復帰によって期待できる効果として,「トキを中心とした生態系の保全」,「トキを活用した環境教育」,「観光客の増加」,「米などの農産物の販売増加」の4項目を提示した。AHPによる分析の結果,「トキを中心とした生態系の保全」の評価が最も高い反面,「観光客の増加」,「米などの農産物の販売増加」の評価が低く,その差も大きかった。また,本研究では,佐渡に関する有効な情報発信手段についての検討を行った。現時点において,訪問客は佐渡に関する情報発信において,おおむね満足している傾向が見られた。これらのことから,今後は,トキの野生復帰と環境保全型農業が結びついているということを含めて,トキの野生復帰に関する背景や現状も含めた適切な情報発信が重要になると考えられる。
著者
望月 洋孝 田中 裕人 上岡 美保
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.115, pp.82-98, 2012-09

地域活性化に関する具体的な方策の策定は,行政主導だけではなく,行政と地域住民の双方の協力・努力が不可欠であるとされている。本研究では,このような観点から,住民参加型の地域活性化策で重要となる佐渡市民の意識について,内発的なアイディアを抽出し,佐渡市の実態に照らし合わせて検討を行うことに主眼を置いた。分析の手法としては,TN法における第1ステップを踏襲し,佐渡市民の地域活性化に関する多くの意見やアイディアを集め,「効果の大きさ」,「実行のしやすさ」,「住民参加の可能性」の視点から検討した。その結果,住民が最優先課題と考え,また,合意形成を図りやすい項目として特徴づけられた項目は,「佐渡汽船の乗船運賃を値下げする」,「佐渡産米のおいしさや安全性をアピールする」,「行政担当者が佐渡の課題をよく理解する」の3つであった。また,その他にも,各集落で継承されてきた伝統文化の項目,トキ認証米や地産地消のような食・農に関する項目が上位に位置づけられることを導いた。以上の項目について,長期的に達成するもの,短・中期的に達成するものとの分類を住民と行政等の関係機関が連携して行い,比較的実現が可能なものについては,相互に重点的な検討を行うことが必要であるといえる。