著者
秋野 順治 望月 理絵 森本 雅之 山岡 亮平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.39-46, 1996-02-25
参考文献数
6
被引用文献数
2 34

アリ類25種との共生が知られているアリヅカコオロギ<i>Myrmecophilus</i> sp.は,敏捷性によって働きアリからの攻撃を免れている。さらに加えて,アリ類の同巣認識フェロモンである体表炭化水素組成比を化学的に擬態することによって,働きアリを欺いていることが明らかになった。コオロギが擬態によって獲得したアリ体表炭化水素成分量は,コオロギをアリから隔離して単独飼育すると減少した。このことは,アリ体表炭化水素成分をコオロギが奪取することによって,アリヅカコオロギのアリに対する化学擬態が成立する可能性を示唆する。また,アリ体表炭化水素を触角で認識する,あるいは舐め取るだけでは,アリヅカコオロギはアリ体表炭化水素組成を化学擬態することができなかった。これらの結果から,直接的な体の接触が化学擬態を成立させるための主要因として作用しているものと考えられる。