著者
望月 隆之
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.12, pp.195-204, 2018-03

2016 年7 月26 日未明,「津久井やまゆり園」にて元施設職員による殺傷事件が起きた。被害者は施設の利用者と職員であり,19 名の利用者が亡くなり,26 名が重軽傷を負うという大事件となった。事件後,報道機関により大きく報道され,専門家によるコメントや検証がなされた。しかし,事件の当事者である知的障害者の声は,ほとんど報道されてないという状況が続いた。「にじいろでGO!」は,横浜市在住の知的障害者の女性が,神奈川県内在住の知的障害者及び家族,支援者に呼びかけ,知的障害者のこれまでの人生や相模原障害者施設殺傷事件について,当事者が語る声を社会に伝えるために作られた当事者団体である。これまでの活動は,知的障害者の声として多くのメディアを通じて社会に発信されている。本報告では,「にじいろでGO!」の立ち上げの経緯及び事件後1 年までの活動について報告し,知的障害者が自ら事件について語ることの意義及び今後の課題と活動の展望まで述べる。
著者
望月 隆之
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-En Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.11, pp.151-168, 2016

本研究の目的は、知的障害者グループホームのサービス管理責任者と世話人の関係性に着目し、利用者への個別支援の現状と課題について明らかにすることである。本研究では、6名のサービス管理責任者を対象にインタビューを実施し、そのデータを質的データ分析法を用いて分析した。分析の結果、サービス管理責任者は、個別支援計画に基づいた個別支援の実現のために、<世話人への助言・指導>を日常的に行っており、その内容として、①利用者との関わりに関する相談、②個別支援に関する助言とフォローを行っている。世話人は、サービス管理責任者の助言・指導に基づき、<日常生活に必要な援助等の提供>として、①利用者ニーズに合った個別支援を行っている。サービス管理責任者は、<サービス管理責任者の課題>として、①世話人が年配者であることによる助言・指導のためらい、②世話人との関係構築への気遣いがあることが明らかになった。 <世話人の課題>として、①利用者との関係構築の困難さ、②グループホームのウチ化、④世話人不足を捉えていることが明らかになった。結果として、サービス管理責任者は、<サービス管理責任者の代行・対応>として、①世話人の役割代行、②利用者トラブルへの対応を行わなければならず、サービス管理責任者が果たすべき本来の役割遂行が困難である。知的障害者グループホームにおいて、利用者への十分な個別支援を実現するためには、世話人の人手不足の解消とスキル向上のための継続的な研修等への取り組みとサービス管理責任者への支援体制の確保が必要である。