著者
木下 優子 矢久保 修嗣
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.379-383, 2009-10-10 (Released:2009-10-25)

漢方治療ががん治療のQOL改善に効果があり,症状緩和においても有効である。院内マニュアルに収載されるなど使いやすいものとしては,1)全身倦怠感の改善に十全大補湯,2)食欲不振に補中益気湯,3)胃の症状(食欲不振や嘔気嘔吐など)に茯苓飲と六君子湯(胃の入り口でつかえてうまく入っていかない場合:茯苓飲,胃もたれ感が強い・胃の中に物がたまって出て行かない場合:六君子湯),4)化学療法・放射線療法の副作用軽減に開始前(できれば2週間以上)より十全大補湯,胸椎に放射線治療を行っているときの食道の不快感には加味逍遥散,化学療法中の下痢に半夏瀉心湯や啓脾湯(カンプトテシンの下痢:半夏瀉心湯,それ以外の場合:啓脾湯),化学療法時の痺れ:牛車腎気丸,5)イレウスやモルヒネによる便秘に大建中湯,6)口内炎に立効散,7)吃逆に呉茱萸湯または芍薬甘草湯,いずれも無効な場合は柿蒂(してい)の使用を検討する,8)悪夢を見るときに桂枝加竜骨牡蛎湯,9)ビスホスホネート製剤(ゾメタ)の副作用による痛み・発熱に麻黄湯,10)下血などの消化管出血に田七人参(粉末)などがあり,緩和ケアの現場で有効であると考えられる。