著者
木俣 博之 馬場 正三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.226-234, 1998-04

大腸癌の発生予防を目的として,ヒトのAPC遺伝子codon 1309と相同の部位に変異を持つマウスに,非ステロイド消炎鎮痛薬剤であるpiroxycamを投与し,その腺腫増殖抑制効果にっき検討した.その結果,piroxycam投与群はcontrol群に比し,ポリープ数および大きさで有意に抑制効果が認められた.また臨床例において,家族性大腸腺腫症患者で予防的結腸全摘術を行い,残存直腸の腺腫のサーベイランス中の3症例に対し,piroxycam坐剤の実験的投与を行った.10週間の投与で,3例ともに残存直腸内の腺腫の縮小,消失が認められ,piroxycamの腺腫発生に対する予防効果が認められた.従来FAPの予防的切除として行われてきた結腸切除術,回腸直腸吻合術式での,術後残存直腸からの腺腫発生の予防的投与に有用であると考えられた.